『セールスマンの死』で「怒れる父親」を演じる李豪宰

 「見て下さいよ。子供たちに頼って暮すなんてできない。体はまだまだ動くのに…」(『セールスマンの死』ウィリー・ローマンの台詞)

 一生を家族のために捧げ、すっかり老いぼれてしまった父親の物語。

 リアリズム演劇の古典『セールスマンの死』(アーサー・ミラー原作、権五鎰(クォン・オイル)演出、6月1日まで文芸振興院芸術劇場・大劇場)が21日、幕を上げた。

 主人公の父、ウィリー・ローマンを今回は李豪宰(イ・ホジェ/62)が演じる。演劇は本来「俳優の芸術」だが、この演劇ほど主演俳優一人の比重が重い作品もまれだ。

 正統色の濃いこの演劇に、「話術の達人」であると同時に「教科書のような俳優」と言われる李豪宰は、あまりにもよく似合っている。タレントのチョン・ヤンジャが妻役で共演する。

 静かなフルートの曲が流れる中、腰の曲がった父、李豪宰が登場する。

 かつてはセールスマンをして二人の息子のために一生懸命働き、今はすっかり老いぼれた体だけが残った63歳の男。演劇は彼が現役だった40代の頃の過去の場面と現在を行き来し、一人の父親がどう生き、どうこの世を去るのかを見せてくれる。

 しかし、李豪宰が演じるウィリー・ローマンは、ただの惨めな父親ではない。「まだまだ働くことができるのに、なぜ社会は私を捨てるのか?」と“怒り”に満ちた父親だ。

 李豪宰は「最近の韓国社会が能力のある父親たちの元気を奪っているのだから、この演劇もその雰囲気を反映する他ない」と語った。

 李豪宰は劇中のウィリー・ローマンのように、実際に息子が二人いる。演劇の中で成長した息子が父親の目を睨みつけながら大声を上げると、父親は呼吸を止めたまま力なく視線を避ける場面がある。李豪宰は「この場面、本当に共感します」とうなずいた。

「子供たちが成長して父親に反抗する時が一番驚きますね。私もそんな経験があります。私は酔うと、息子二人を呼んであれこれ話をするのが趣味でした。ところが、こいつらが大きくなるとそれが嫌になるようです。ある日、二人の息子が私の前に立ちはだかって『酒を飲んでもいいが、頼むから口を閉じてくれ』って言うんです。どれほど驚いたことか。子供は抱っこされているうちだけが子供なんだと本当に思いました」。

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李圭鉉(イ・ギュヒョン)記者
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