「アンニョンハシムニカ、郭徳俊(クァク・ドクジュン)イムニダ。アンニョンハシムニカ…」
19日、国立現代美術館展示科の事務所。在日韓国人作家の郭徳俊氏(66)が、翌日に行われる展示会のオープニングイベントを控え、韓国語の発音練習をしていた。国立現代美術館が選んだ「2003今年の作家」である郭氏の記念展は、8月31日まで行われる。
日本の京都で生まれた郭氏は、小学校2年生の時に解放を迎えた。以降、日本と韓国という二つの社会で同時に異邦人として生きる中で、アイデンティティの問題に苦しんできた。
「私は日本でも韓国でも、一人ぼっちです。だから孤独です」
「自分は誰か」という作家の苦悩は、展示会場でまず観客を出迎えるビデオ作品『自画像』に最もよく表れている。作家が「ビデオアートで描き出した自画像」と説明する画面の中で郭氏は、ひび割れたガラス板にしきりに顔を擦り付ける。
今回の展示には60年代以降の郭氏の絵画、写真、オブジェ、パフォーマンス作品の約90点が登場する。
準備作業が行われている展示会場を見回しながら、作家は何回も「プラス、マイナスはゼロです」という言葉を繰り返した。
「意味のあることと、意味のないことを混ぜてゼロを作り、権力のある者と権力のない者を混ぜて、同様にゼロを作る」という説明だ。
郭氏が『大統領と郭』シリーズの前で足を止めた。大型の白黒写真には米タイム誌の表紙に登場したクリントン、ブッシュなど、歴代の米大統領の顔が登場する。ところが顔の下半分は、鏡に映った郭氏本人の顔だ。
「この作品には3人の顔が登場します。絶対権力を象徴する米大統領の顔、権力とはまったく関係ない自分の顔、そしてその二つが作り出す新しい顔です」
評論家たちは郭徳俊氏の作品世界の基本をユーモアとナンセンスと評価する。
国立現代美術館の庭には、計量器10台を塔のように積んだ郭氏の作品がある。「一度考えてみて下さい。重さがなければならないものが、逆に重さがない状況を」
これについて国立現代美術館のカン・スジョン学芸員は「作家は明確な単位と情報で実測可能な存在と行為に反論を提起している」と説明する。
当初、今回の展示会を知らせる看板は、「郭徳俊」とハングルで書かれた名前に斜線が薄っすらと重なったデザインだったという。ところがこれを見た作家は「まるで私の名前が真っ二つになったようだ」としながら、「斜線をカットしてほしい」と主張したという。
「私が日本で今まで大事にしてきたハングルの名前ですから…」。問い合わせ(02)2188-6033。