リアルな刑事物語『ワイルドカード』

 映画を家に喩えるとすれば『ワイルドカード』(16日公開)は、非常に丈夫な家だ。砂と砂利、水とセメントを混ぜて造られたこの家からは、煉瓦工と左官工の熟練の技が感じられる。刑事映画というジャンルで、これ程までに基本に忠実な韓国映画があったかと思う程だ。

 強力班(殺人、強盗などの捜査を担当する部署)のベテラン刑事、オ・ヨンダル(鄭進永(チョン・ジニョン)扮す)と6カ月目の新人刑事、パン・ジェス(ヤン・ドングン)の二人は、コンビを組んで呼吸を合わせる。

 管内で殺人事件が起こって捜査が難航する中、次の事件がまた起こる。オ・ヨンダル、パン・ジェスチームは、同じ手口を使った前科者たちを追い、長く耐え難い張り込み捜査に突入する。

 『ワイルドカード』は2年間に200人の刑事に直接会ってシナリオに活かしたほど、非常に手のかかった映画だ。

 こうして世の中を真正面から描いた映画は、それが嘘ではないことを証明する。カメラは強力班の刑事たちの日常をクローズアップし、彼らの生き方をさまざまな角度から見せてくれる。ここに実際の現場のエピソードが重ねられ、映画はリアルさを増す。

 98年の『約束』で350万人の全国観客動員数を記録した金裕珍(キム・ユジン)監督の作品だ。金監督は5年ぶりに『トゥー・カップス』(康祐碩(カン・ウソク)監督)、『情け容赦なし』(李明世(イ・ミョンセ)監督)、『公共の敵』(康祐碩監督)などとは違ったスタイルの刑事映画を作った。

 『トゥー・カップス』の傾いた視線を捨て、『情け容赦…』のスタイルを減らし、『公共の敵』程の野心もない。『ワイルド…』はその隙間を刑事たちの生活で満たしている。

 この映画が突出しているのは、オ・ヨンダルとパン・ジェスはもちろん、さまざまなキャラクターやエピソードの存在感があるからだ。

 ディテールの大切さが感じられる『ワイルド…』には、張り込みで疲れた刑事たちが、サッカーで活力を取り戻す場面のように緊張の緩急を操るリズムまで取りこまれている。

 正義感に燃えてあちこちで衝突を起こすパン・ジェス役のヤン・ドングンは、言葉よりも体が先に動くキャラクターを彼ならではの迫力で見事に演じている。

 鄭進永は『百万本の薔薇』の歌を口ずさむだけでもオ・ヨンダルというキャラクターをよく説明している。だらしない格好で言葉を放つファッションマッサージの社長役で登場する李ドギョンも印象的だ。

 「刀は分けて受ければ死ぬことはない」。『ワイルド…』は金班長(キ・ジュボン)のこの台詞のように、全般的に均等だ。冒険を選ばなかったために映画は生き残ったが、そのために『ワイルド…』は丈夫だが美しくはない「家」に仕上がっている。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
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