『殺人の追憶』のポン・ジュンホ監督「犯人も映画を観ただろうか」

 街に雨が降り注いだ。映画『殺人の追憶』で、大雨の中、犯行が発生したその悲劇の日のように。

 雨の中、ポン・ジュンホ監督(34)と会った。短編映画を作っていた当時から大きな注目を集めてきた彼は、今『フランダースの犬』に続いて発表した2回目の作品、連続殺人犯を追う2人の刑事物語で一躍シンドロームを巻き起こしている。

 華城(ファソン)連続殺人事件中、6件の疑問死を扱ったこの映画に対して、彼に投げかける6つの疑問詞。

▲what

 『殺人の追憶』は公開から17日目の11日現在、250万人余を動員する記録的な興行を続けている。完成度に対する賛辞は溢れるほどあったが、軽いコメディーだけが人気を得ている状況で、“場外ホームラン”を予測した人はそう多くなかった。

 「私も実感が湧かないですね。面白く作ろうとはしましたが、ただ楽しいだけの映画ではないですから。でも、観客の反応を見ると、この事件や、犯人を生み出した時代に対する嘆息と怒りを表出していました。伝えたかった熱い感情のわだかまりをそのまま伝えられたことが、一番嬉しいです」

 彼は「悲劇的な実話であったため負担はありましたが、真心で接近すれば問題はないと信じていた」とした。本当に、すべて天才性の源泉は“正直”であるのかも知れネい。


▲why

 彼はなぜこの映画を作ったのだろうか。「この映画の原作である演劇『私に会いに来て』を見た後、実際に事件の資料を接しながら感じた悲しみと怒り」のためだった。

 続いて彼は関連資料を探れば探るほど、結局、この事件は1980年代の韓国社会の暴圧と無気力の産物であるという結論に達したという。フランスの監督、エリック・ロメールが「映画とは人々の行動よりも、その心の中に浮かび上がるものを示す媒体」と言ったのを思い出す。

▲when

 ならば、彼は80年代に対してどのようなイメージを持っているだろうか。答えは「灯火管制」。「この映画のクライマックスである女子中学生殺人事件の場合、『民防衛の日』に発生しているんです。みんなが灯りを消して、シャッターを下ろしている間に、死んでいったのです。80年代は国家が人為的に闇を強要した時代でした」

 彼は「80年代に対するそのような怒りにさらに集中すれば、『ペパーミント・キャンデー』になり、その中で生まれた個人的な思い出をさらに発展させれば、『品行ゼロ』になったはず」と説明した。

▲how

 撮影の間、彼は生々しいディテールに対するものすごい意欲を示したことから、“ポン・テール”と呼ばれた。撮影日誌で彼は「監督はみんな地獄に落ちるはずだ」というユーモア溢れる言葉で、スタッフや俳優をせき立てた日々を要約した。

 「それでも、事前に徹底して計画を立てた後、整理した過程でもって撮影を進めようとしました。現場で最も重要なのは計画性だと思うから」

 数年前、ある国際映画祭の取材の時の彼の姿を覚えていた記者は、自然と頷いてしまった。当時、大勢の人が夕食を食べた後、山積みされた皿を、彼は極めて慣れた手つきで一気に整理したものだった。

▲who

 「宋康昊(ソン・ガンホ)と金サンギョンはこの映画で、代替不可能です。康昊さんは怪物俳優と言いましょうか。彼そのもので独自の芸術家なんです。それだけ、優れた感性と創造性を持っています。この映画全体の雰囲気は、彼に頼った部分が大きいですね」

 「金サンギョンはキャスティング当時、シナリオを読んだ後すぐに『腹が立って仕方がない』と核心の感想を述べてくれました。それを聞いて、100%信頼しましたね。彼の新鮮さが康昊さんのベテランな演技と重なって、素晴らしく調和したのだと思います」

▲where

 この映画のポスターの広告コピーは「あなたは今どこにいるのか」だ。捕まえられなかった犯人は、今頃どこかでこの話題作を観たのではないだろうか。監督は、犯人は平凡な人物だと考える。

 「彼は今頃、子供もいて、平凡に暮らしているような気がします。しかし、そう想像すると、本当に苦しくなります。ならば、私たちの人生とこの世界はどうすればいいのだろう、そう思えますから。彼が自殺したり、精神病院にでも入院しているのなら、かえって慰めになると思うんですが…」

 悪の顔は平凡だ。しかし、エピローグで十数年の歳月が流れ、結婚した宋康昊の現在を見せるこの映画は、そのしぶとい生命力でもって、平凡な善の力をもまた見せつける。

 いや、数百万の観客の間に形成された悲しみと怒りの連帯が、すでに希望を証明しているではないか。

李東振(イ・ドンジン)記者
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