天国のパパに代わって彼女に手紙を…『火星へ行った男』

 小学生のスンジェは死んだ父親が火星に旅へ出かけたと信じるソヒのために、代わりに手紙を書いて送ってあげる。ソウルに転校したソヒを長い間思ってきたスンジェ(申河均(シン・ハギュン)扮す)は、17年後に故郷へ帰って来たソヒ(金喜善(キム・ヒソン)扮す)と劇的に再会する。

 『火星へ行った男』(16日公開)は『同感(日本公開タイトル:リメンバー・ミー)』でヒットを記録した金ジョンクォン(演出)、チャン・ジン(シナリオ)の二人が再びコンビを組んだ作品だ。

 ダム建設で水没してしまった村の水中シーンから始まるこの映画は、子供の頃のかすかな思い出を現在まで引きずるスンジェを通じて、観客を純粋な愛に導く。

 『同感』で無線というコミュニケーション手段を活用した監督は、今回は手紙を愛の媒介として使う。

 しかし『火星へ行った男』は、人物間の設定があるだけで、その関係を十分に満たすだけの内容がない奇妙な映画だ。

 ストーリーの大きな流れから、細部の描写まで、慣性に頼った演出はあちこちで臨場感を失わせてしまった。

 自転車が倒れた時に川に落ちたソヒの靴が、スタッフが手で投げ込んだのがはっきりと分かる程の放物線を描いたり、理容師の手の動きが最小限に抑えられていることからも分かるように、手直しがされなかった場面の数々はあちこちで不始末な出来ばえをそのまま現している。

 幼少時代に二人の子供が狭い空間で雨を避けるエピソードは、映画『クラシック』を始め、多くの映画で使い尽くされた風景のために目障りで、その瞬間と同時に九九を覚えた思い出を現在の場面と繰り返す伏線は、不適切な活用として大きな感興を得ることができない。

 この映画で申河均と金喜善はミスキャスティングだったようだ。

 純朴さを表現する照れくさそうな笑い一つでこの映画の演技の半分を代理した申河均は、場違いのパーティーに招待された客のようだ。

 『地球を守れ』や『復讐者に憐れみを』で申河均がずば抜けた演技力を見せたことと比べると、素晴らしい俳優だからといって、すべての映画で活躍できるわけではないという事実を今更ながら実感させる。

 金喜善はスクリーンで彼女を2時間近くも見ることがどんなに退屈かを再認識させてくれる。感情のこもっていない涙や、最後まで本を読むような台詞処理に一貫するこの美人女優は、ソヒではない金喜善そのままだ。

 今年に入って増えた忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)のラブストーリのほとんどは、人為的な純粋の時空間にのみ逃避しようとしている。

 そらぞらしい偽善染みた映画よりも、これからは多少毒々しい映画でも、映画ファンを興奮させるような映画が観たい。

李東振(イ・ドンジン)記者
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