『殺人の追憶』は、どうしてこのような大成功を収めることができたのだろうか。
一番の理由は「386世代(60年代に生まれ80年代に大学に通った人々)を動かした映画」だからだ。
1980年代に対する複雑な思いを持つ30代の人々は、当時に対する感情をそのまま描いたこの映画に熱狂している。サイダスのシム・ヨンスン広報チーム長は「公開前から特に30代の男性が高い関心を示した」と説明した。
この2~3年間、「ヤクザ」を主に扱ったコメディが相次いでヒットしてきた現実の反作用とも思われる。
空虚な笑いに食傷気味の映画ファンが、優れた作品性に加えて宋康昊(ソン・ガンホ)に代表される娯楽性が適度に加味された映画に魅せられたというわけだ。
ミョンフィルムのシム・ボギョン代表取締役は「当初、未解決事件の実話を素材にした点が興行に悪影響を与えると分析されたが、メディアの全面支持を得た状況で、むしろこれが強みとなった」としながら、「この映画はヒットが社会的論点と結び付いた『シュリ』や『共同警備区域/JSA』と同様の経路を辿っている」と分析した。
映画評論家のジョン・チャンイル氏は「若い映画ファンは、素材の重さに対する負担はなく、演技のアンサンブルといった映画的な楽しさにそのまま魅了されている」と説明した。
これらすべてのものが可能だった理由は、『殺人の追憶』が卓越した完成度を誇る大衆映画であるという点にある。
映画サイト「ムービスト」では、この映画が10点満点中9.24の観客評価を得て、『ユージュアル・サスペクツ』や『ライフ・イズ・ビ ューティフル』を押し退けて国内外の映画の歴代最高を記録している。