「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の人々を念頭に置いて弁士の話法も考慮しました」
5月23日に初めて南北同時公開される映画『アリラン』の李ドゥヨン監督(62)は29日、ソウル中央シネマで開かれた試写会で「羅雲奎(ナ・ウンギュ/1902~1937)の『アリラン』(1926)に秘められた『恨』の情緒を、我が民族が共に感じられることになり感激だ」と語った。
シオリ・エンターテインメントの創立作品となる『アリラン』は、今月21日、駐中北朝鮮大使館のリ・グァンイク領事から「南北同時公開の暫定合意をメディアに公開してもいい」という返答を得た。すでに北朝鮮に映画フィルム2本が送られ、平壌(ピョンヤン)の凱旋映画館と平壌映画館の2カ所で公開される予定だ。
春史(チュンサ)・羅雲奎の『アリラン』をリメークした映画は今回で6度目だ。李監督は原作フィルムやシナリオさえ残っていないために苦労したという。李監督は「仕方なく『弁士を使った白黒無声映画』という形式だけを忠実に再現し、内容は他のリメーク映画を参考にして多くの部分に創作を加えた」と述べた。
「原作に捕らわれず、自由に現代的な感覚を活かしました。トップクラスの俳優を起用した過去の『アリラン』のリメーク作品とは違い、オーディションで完全に無名の俳優だけを出演させたのも同様の脈絡です」
今年は羅雲奎の生誕100周年の年だ。俳優の崔周鳳(チェ・ジュボン)氏の弁士解説を無声映画の画面に加えたドゥヨン監督の『アリラン』は、日本帝国の統治下で拷問されて発狂した人物の話を描いている。
李監督は「韓国映画の基本である『新派』を土台に、滑稽さと風刺を活かした」としながら「最近では珍しい無声映画で、映画館街に新風を巻き起こすだろう」と語った。
13億ウォンの制作費を投じて昨年夏に撮影された『アリラン』は、同年10月に平壌で試写会を開いた。北朝鮮の人々は映画終了後に拍手でこれを歓迎したという。
シオリ・エンターテインメント側は「金正日(キム・ジョンイル)総書記に『アリラン』の感想を要請し、その結果を待っている」と明らかにした。