最近の不景気にも関わらず、新羅(シルラ)ホテルの韓国料理店「徐羅伐(ソラボル)」の売上は前年に比べ40%も増えた。ホテルの韓国料理店が次々と姿を消している現実からすると奇妙な現象だ。
その秘訣は「厨房」にある。10代の少年のように髪の毛を短く刈った料理部長のチョ・ヒスクさん(46)がその主人公だ。ホテル業界初の女性料理部長となったチョさんは、韓国料理に対する観点からして変わっていた。
「いくらホテルだからといって、何の変哲もない韓国料理ではまったく魅力がありません。私は重々しくて優雅な宮廷料理は苦手です。同じ材料で作った料理でも、お客様をどう楽しませるかが重要です」
チョさんが作り出した新しい味の中で、味噌ソースは最も代表的だ。
味噌(500グラム)にリンゴ果汁(300グラム)、タマネギの汁(100グラム)、砂糖(250グラム)、コチュジャン(辛味噌、200グラム)、酢(600cc)、塩(30グラム)、ニンニク(50グラム)、水(1リットル)を入れて作った味噌ソースは、マヨネーズやケチャップよりも遥かに香ばしくてさっぱりとしている。
味噌ソースを添えた牛肉はまさに一品。「先に味噌ソースを皿に敷きます。その上にダイコンの芽と薄く切ったヒレ肉を添えます。飾りは刻んだキャベツで十分です。レタスや山菜と和えても美味しいです」
チョ・ヒスク式サムパプ(野菜包みご飯)も独特だ。日本の寿司のようにキムチやナムルをご飯で巻くが、白米、玄米、雑穀米など、種類が多様だ。色合いも美しく、さまざまな味を楽しめて十分なポイントになる。ご飯を味噌とキャベツ、昆布とチョコチュジャン(酢辛味噌)と軽く混ぜれば、さらに味わい深くなる。
コムタン(牛テールスープ)や蓼鶏湯(サムゲタン)も土焼きの器では出さない。スープはドレッシング用の皿に入れ、注いで食べられるようにし、肉は骨を取って別の皿に盛る。
「西洋のコース料理のように、韓国料理のさまざまな味を楽しんでもらおうという意図です。土焼きの器で一杯を食べてしまうと、他の料理はまともに味わえないでしょう」
チョさんは「韓国の醤油や味噌、キムチを薬味やサイドメニューから昇格させた料理がもっと増えなければ」と主張する。
チョ・ヒスクさんはもともと教師だった。全羅(チョルラ)南道・高興(コフン)の中学校で家庭科の教師をしていたが、料理が好きでシェフになった。
世宗ホテル、ノボテル、インターコンチネンタルホテルを渡り歩き、豊富な経験を積んだチョさんは「世界はますますアジア料理に関心を向けているのに、私たちだけが粗末に扱っている」としながら、「それは一次的に韓国料理人の責任」と語った。
今年の春も忙しい。今年1月に『名人と名匠の出会い』というテーマで、料理と器のアンサンブルを披露して話題を集めたチョさんは、茶の季節を迎え、来月15日まで、茶料理のイベントを開く。茶の葉でだしを取った料理、粉茶を使った料理など、独特の料理を披露する予定だ。