今年の春は例年に比べて「心を洗われる」映画が多く公開されているが、丁埰琫(チョン・チェボン)の代表作を映画化した『五歳庵』(ソン・ベクヨプ監督)はその中でも一際輝いている。
両親を失って山寺に住むことになった8歳の少女カムと5歳の少年キルソンの物語を描いたこのアニメは、一人ぼっちになった子供の涙ほど切ないものはないということを教えてくれる。
悲しい内容の童話でありながら真面目な仏教映画でもあるこの作品には、母親に対する幼い二人の胸痛む思いが随所に滲んでいる。
「見せたい映画」よりは「多くの人が見るような映画」に力を注ぐ忠武路(チュンムロ)のトレンドや笑いへの強迫がまったくない、こうした創作アニメが劇場公開用に制作されること自体、実は「小さな希望」を含んでいる。
『となりのトトロ』が日本の自然を鮮やかに描き出したように、『五歳庵』は韓国の自然をありありと描き出している。
深まる秋の野原の豊かさと雪に覆われた冬山の裾のほのぼのとした雰囲気を叙情的に描き出したこの作品は、叙情的な自然描写が際立っている。
細部にわたって観察して描き出した子供たちの無邪気な姿は、水彩画のように柔らかなタッチで描かれた森の風景とよく似合う。
夕陽に傾く寺院の塔影や、川のほとりの静寂を破って落ちる石塔の石ころの描写は、このアニメのストーリー程に重要だ。