心温まる「人情」…『ボリウルの夏』

 たまにはコーヒーやコーラではなく、さっぱりとした麦茶が飲みたい時がある。『ボリウルの夏』(李ミンヨン監督/25日公開)は、真夏のサッカーの試合後に飲む冷たい麦茶のように、都会人の心をさっぱりと洗い流してくれる映画だ。澄み切ったスクリーンには元気な笑いが溢れている。

 ボリウル村の修道院にサッカーが好きな若い金神父(車仁杓(チャ・インピョ)扮す)が新たに赴任する。修道院の子供たちと友達のように過ごす金神父は、気難しい修道院長(張美姫(チャン・ミヒ)扮す)と事ある毎に衝突するが、サッカー好きで近所の寺のウナム僧侶(朴ヨンギュ)とは意気投合する。

 ボリウル村にサッカーブームが起こると、金神父が率いる修道院の子供たちとウナム僧侶が指導する村の子供たちはサッカーの試合をすることになる。

 この映画は二人が並んで座る場面が何度も登場する。カメラはともすると神父と僧侶を、僧侶と修道院長を、僧侶と隠し子の息子ヒョンウを画面の左右に置いて映し出す。一見この部分だけを見ると対立構造のようだが、彼らの間には言葉のない「人情」が存在する。

 ランニングシャツに袈裟姿のウナム僧侶とローマン・カラーの神父服姿の金神父が向かい合って座り、コングクス(冷たい豆乳の中に麺が入っているもの)を食べながら、不真面目な対話(「本来上座がこっちの席なんだけど」、「思ったよりも冗談がお上手ですね」)を交わすのは、対決意識ではない連帯感だ。

 『あかりをちょっと消してください』などの戯曲作家として知られる李萬喜(イ・マンヒ)氏は『ボリウルの夏』のシナリオでも、人間関係の内幕を独自のウィット感で表現する持ち技を披露した。

 「修行者が服なんかに縛られて何の修行ができるんですか。韓国仏教は暑ければ『ランニングシャツ』だけを着ます」と、ことあるごとにカトリックに「タックル」をかけるウナム僧侶は、この映画で笑いを作り出す主役だ。

 何かと口うるさいが、夜になれば連続ドラマにどっぷりと浸かり、「二人が別れちゃう…」と一人つぶやく修道院長のキャラクターは小説『B舎監とラブレター』を連想させる。

 ウナム僧侶が金神父に「今日は飲みすぎちゃったみたいだ。初恋の話まで全部話したし」と言ったり、修道院長が「面白い世の中ね。神父も家出して」とつぶやく場面は、せりふ一言で以前の状況を要約する才能が際立っている。

 カメラが動くたびにぼやける焦点は目障りで、単調な展開と子役俳優たちの中途半端な演技は残念だが、村の人々から学ぶ温もりはそうした不十分な部分までを十分にカバーしている。「そうそう、韓国人の人情って本当はこんなに温かかったんだ」と気分良く振り返る頃、ボリウルの夏も暮れる。

李自妍(イ・ジャヨン)記者
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