劉五性が映画『星』でラブストーリーに初挑戦

  5月1日に公開する映画『星』の劉五性(ユ・オソン)は、私たちの知っている劉五性ではない。目を真っ赤に充血させた狂気や、拳をぎゅっと握った執念など見られないその優しい表情は、全てが失われてしまったように見える。

しかし指輪を外したその空間が指輪をはめる空間でもあるように、劉五性の新しい「顔」を規定するのは、まさに彼のその「何も残っていない」表情であるかも知れない。『星』は、劉五性にとって最も重要な映画になりそうな気がした。

 「自分自身に戻ったとでも言いましょうか、何よりも自分に正直になりたかったんです。『星』の主人公のヨンウは、私と似ている部分が多い人物なので、特にキャラクターを分析する必要もありませんでした。私のことをナイフで刺しても血が一滴も出ないなんて言う人もいますが、『人の助けにはなれなくとも、他人に迷惑だけはかけまい』というのが私の本当の姿です」。

 劉五性が朴ジニ、コン・ヒョンジン、李ホジェと共演した『星』は、孤児として育った一人の男の愛を描いたヒューマンドラマだ。この作品は劉五性が初めて選んだ「ラブストーリー」だ。

 麻薬の禁断症状に苦しみながら罵声を浴びせる『友へ/チング』、死に直面してまで歯を食いしばって相手に立ち向かう『チャンピオン』、一人を集中的に目茶苦茶に殴りつける『アタック・ザ・ガスステーション』の男に、心を一度も開くことのできない内気な恋愛ができると?

  「わざわざイメージチェンジのために特定の作品を選んだりはしません。この映画もキャラクターやストーリーに惹かれたのであって、ラブストーリーというジャンルだから選んだわけではありません。『劉五性という俳優は常に努力しているんだな』なんて受け入れてくれたらと思います。ただ、ラブストーリーの固定されたフレームを壊したいという考えはありました」

 映画の中で劉五性は、今までに演じてきた強烈なキャラクターたちとは異なっていた。実は劉五性は禁欲的な修道士のような顔を持っている。


 劉五性は考えをしっかりと持った人の典型的な口調だった。早口でありながらも聞き手に注意深く気を配る言葉に満ちていた。

 インタビューの途中に劉五性の携帯電話が二度鳴ったが、彼は番号だけをちょっと確認しただけで電話には出ず、話を続けた。そして携帯電話はマナーモードになっていた。いまだかつて記者とのインタビューのために携帯電話をマナーモードにする俳優がいただろうか。

 劉五性は過去に出演した14本の映画の中から自分にとって最も大切な作品として、映画の楽しさを初めて教えてくれた『ビート』、初めて主演を演じた『SPYリー・チョルジン 北朝鮮から来た男』、そして自らを浄化させ自分らしさを取り戻した『星』を挙げた。なら、最も大ヒットを記録した映画『友へ/チング』は?

 「その映画でも最善を尽くしたのは事実ですが、他の作品に比べ、私が特別に優れた演技をしたとは思いません。なのに、意外にものすごい反響があって。だから、その映画による人気は自分のものではないように思えて、それを享受するのは止めようと心に決めたんです」。

 そして、彼は自分が『友へ/チング』にキャスティングされたのは、「他の俳優たちがみなその役を断ったから」だったと、淡々と話してくれた。劉五性は自分の分ではないと考える幸運に対しては明確に一線を引いてしまう、冷徹な俳優だった。

 「昨年10月、『星』の撮影に参加しながら、心的に本当に辛い日々を送った」と話す彼に、昨年、あらゆるメディアで取り上げられた郭[日景]澤(クァク・キョンテク)監督との“不祥事”について聞かざるを得なかった。

 結局、裁判沙汰にまで拡大した彼と郭監督は、『友へ/チング』と『チャンピオン』を撮りながら、最高の友情を見せつけた友たちではなかったか。

 「最近、私たち2人が和解したという報道がありましたが、事実じゃありません。この先、2人の共同作業はないはずです。各自、自分の道を歩むだけです。正直、昨年、一連のことを経験しながら、これまでに持っていた自分の価値観が完全に壊れてしまうほど、ショックを受けました。しかし今は、その過程で私の周りに本当に大切な人たちがいることを再発見できたことに感謝しています」。

 彼は、インタビューの途中、何度も「あの頃に戻りたい」と話した。初めて演技をやった頃のことだ。「これまでに蓄積したエネルギーを全部使い切ってしまったのだから、第一歩を踏み出したあの頃に戻って、再出発を切りたい」という決心だった。

 それは、彼に信頼を送る観客の願いでもある。彼ほどに才能あってシリアスな俳優をゴシップなどに載せるには、スクリーンは大きすぎるのだ。

李ドンジン記者
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