青春の苦悩を巧みに描いた映画『嫉妬は私の力』

 朴チャノク監督の『嫉妬は私の力』(4月18日公開)は、見えるものよりも見えないものを多く見せてくれる映画だ。そして言ったことよりも言わなかったことを多く語る。

「同じ妻帯者に二度も恋人を奪われた青年」というモチーフには、今にも何か起こりそうな緊張感があるが、作品中の人物は皮膚呼吸でもするように、人生の庭を悠然と歩いているようだ。

 11月末の顔をして7月末の心を隠したこの映画は、表面の氷と内面の火が最後まで額を突き合わせたまま奇妙な欲望のトライアングルを作る。じっとのぞきこめば、あなたはそのトライアングルの中でゆっくりと自分の青春がプカプカと浮び上がるのを目にするかも知れない。

 文学雑誌の編集長を務める妻帯者のユンシク(ムン・ソングン)を愛するようになった恋人のネギョンと別れた後、ウォンサン(朴ヘイル)は、その雑誌社に就職する。

 ウォンサンは新たに恋心を寄せる年上の写真作家ソンヨン(ペ・ジョンオク)をまたもユンシクに奪われる。ソンヨンのことで悩むウォンサンは自分に関心を寄せる下宿屋の娘のヘオク(ソ・ヨンヒ)に対して負担を感じる。

 『嫉妬は私の力』は、若さの混沌の中をさ迷い、今まさに若さの「陰」の部分からすり抜けた人たちのための映画だ。

 体が心に反し、欲望に満ち、未来が現在に罠を仕掛けるその時代の二律背反を、監督は鋭い観察力と繊細な表現力で描き出した。

 一人の男に二度も恋人を奪われたにもかかわらず、その男に対して嫉妬と好感を同時に抱き、自分が愛する女性と自分を愛する女性の間で自らが望まない道を歩むウォンサンは、青春には不可欠な不安をそのまま体現する。

 時には直説的に、時には隠喩的に織りなすこの映画の台詞は絶妙だ。

 ウォンサンはソンヨンに甘えと絶望を交えながら「ソンヨンさん、編集長とは寝ないでください。誰かとしたいなら、僕と寝てください。僕も上手いんですよ」と言い、ユンシクは自分の浮気癖について「浮気もできず、妻にも良くしてやれない奴よりよっぽどましだ」と合理化する。

 この映画のキャラクターたちは、どこかにモデルがいるかのような印象を与える程に立体的だ。狭い垣根の中で複雑に縛られた人物たちが見せる形態は、私たちの周りの誰かと少しずつ似ていている。

 明るい顔にぎっしりと陰を潜め、若い日の混乱をそのまま演じている朴ヘイルをはじめ、出演者たちはこの映画独特の雰囲気に自然と溶け込んでいる。

 映画ファンであれば、この作品を観ながら洪尚秀(ホン・サンス)監督の映画を連想するかも知れない。

 飲み屋、ホテル、カラオケといった映画に登場する場所から、登場人物たちの強迫的な行動、何気ない台詞の数々などから朴チャノク監督が洪尚秀監督の映画『オー!スジョン』で助演出を務めたのが思い出される。

 もしかしたら、こうした連想の一部は事実かも知れない。しかし、洪尚秀監督の映画より、もう少し温かく、ドラマに忠実な朴チャノク監督の今回の長編デビュー作の持つ魅力は、今後の作品を十分に期待させる。

 この程度の完成度であれば、いわゆる「洪尚秀スタイル」の映画が、いくら登場しても大歓迎だ。

李東振(イ・ドンジン)記者
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