「昼間は大学に通い、夜はアニメーション会社でアルバイトをしました。結局、自分がやりたい仕事をするためには、寝る時間を削るしかありませんでした。『PAPEFOFO MEMORIES』は、そうして毎日夜明けに生まれた作品です。眠い目を擦りながらペンを取りましたが、それでもその瞬間が一番幸せでした」
こういう事情を知らない人々は「朝起きていたら有名になっていたんだろ」とこの作家の幸運を羨むが、シム・スンヒョン(32)の漫画『PAPEFOFO MEMORIES』(弘益(ホンイク)出版社)は、こうして夜明けに生まれた作品だ。
昨年10月に出版されたこの若手作家の「感性漫画」は、現在までに18版、35万部が出版され、最近では海外にも進出した。日本、中国、台湾、マレーシアなど、韓国漫画としては異例の高価格で著作権契約が交わされた。
日本では文藝春秋社が韓国の通常の著作権取り引き額の5~7倍に達するアドバンス(印税の前払い金)150万円に、6%の印税を支給する契約を結び、中国と台湾でもそれぞれ2000ドルのアドバンスと6~7%の印税契約を交わした。
弘益出版社の李スンヨン社長は「日本だけでも10以上の出版社からのオファーがあり、幸せな悩みに陥った」と語った。韓国漫画としては異例の破格待遇となった。
実は漫画界でシム・スンヒョンの名はほとんど知られていなかっス。
漫画雑誌の公募展への応募や有名作家のアシスタントからデビューするといった従来の慣行に囚われず、数年間に及ぶ単独作業で、今回の作品デビューに至ったためだ。
「天才画家になれば飢えるし、酷い場合には若死にする」と言う父の反対のため、大学では植物資源学を専攻したが、作家の漫画との出合いは4歳の時にさかのぼる。
「当時、母を亡くして無口になり、それから自分の感情を文章や絵で表現するようになった」と作家は語った。
除隊後、アニメーション会社に入社したシム・スンヒョンは、動画や原画を描いて生計を立てたが、「描きたい絵ではなかった」という。
作家は以降、毎晩のようにそれまで溜まっていた創作の欲求を画用紙にぶつけ、そうして『PAPEFOFO MEMORIES』のエピソードは具体化されていった。
純粋さを自分のアイデンティティにする青年パペと、優しくか弱い少女フォフォの小さな恋物語だ。「男性の感性には合わない」と大部分の専門家らが首を振ったが、数十万人の若い読者たちはパペとフォフォの恋物語に共感した。
ポータルサイト「ダウム」のコミュニティにある作家のホームページ(http://cafe.daum.net/papepopo)は、この美しい主人公たちの「日々を生きながら感じる日常の小さな話」に共感する文章などで埋め尽くされている。
作家は「私が何しろ小心者なので、私のような消極的な人だけが自分の作品を理解してくれると思っていた」としながら、「これほど多くの読者が支持してくれるのは、人は皆、誰でも似たような不安や寂しさを抱えながら生きているようだ」と語った。
ある読者は「最初はただの漫画だと思って読み始めたが、読んでいるうちに心が本当に暖かくなった」と感想を寄せた。