「ライブはアーチストと観客が一体となる一種のゲーム」

 李スンファン(39)が自身のバラード曲を集めた2枚目のバラードアルバム『His Ballad2』をリリースした。1997年にリリースされた『His Ballad1』から漏れた曲と、新曲4曲の計16曲を収録した。

 李スンファンは最近、この新しいバラードアルバムに収録された曲を中心に、大学路(テハンロ)のポリメディアシアターでライブ公演を行っている。公演会場の控え室で李スンファンにインタビューした。

 年齢に似合わない可愛らしい顔と舞台マナーで「星の王子様」というニックネームを持つ李スンファンだが、控え室の雰囲気はじめじめとして、壊れた椅子はテープでぐるぐる巻きにされていた。

 李スンファンが来年から舞台に一切立たないという噂から話題にした。

「最高の姿を披露できる時にステージを去ろうと思うんです。段々と私の公演の興趣が薄れているのを感じます。ドラムファクトリー(李スンファンの所属事務所)の人たちとの意見も合わず、ファンの好みに合わせるのも辛いようです」

 李スンファンは以前、『月刊ポップソング』という音楽雑誌で読んだという「後輩たちが語るロッド・スチュワート」という記事の話をした。

「ものすごく偉大だという内容だと思ったんですが、まったく反対でした。もう引退の時期じゃないかということを後輩たちが語っていたんですね。その記事を読んで感じたことが多かったです」

 そのためだろうか、一時はオリンピック体操競技場で1万人以上を動員して行われていた公演は、最近では大学路にある400席ほどのライブハウスで行われている。

「ちょっと慣れないですね。視聴覚室で公演している感じがしちゃって。大きな会場ならではの鳥肌の立つような感動はありませんが、ファンと身近に接する長所があります」

 李スンファンをロッカーという人はいないが、彼はやはり「ロックではなければ音楽ではない」と思っているアーチストだ。

 李スンファンは今まで発表した7枚のアルバムの中からベストを挙げなかった。その代わり『あなたは知りません』、『頼み』、『私の英雄』の3曲を「ベストトラック」に挙げた。

 『あなたは知りません』は自ら作曲したバラード。『頼み』はオリエンタルサウンドをふんだんにフィーチャーした曲で、『私の英雄』はアートロックの雰囲気に満ち溢れたロックだ。

 李スンファンをブラウン管で見てからもうずい分経つ。李スンファンは「最近は出演のオファーもあまりない」と笑いながらこう続けた。

「まったく反応のない観客の前で歌うのがとても怖いんです。私がデビューして間もない90年代初め頃は、アーチストは尊敬される存在でした。今では大部分の歌手がテレビに出演してはこっけいな姿を見せています。もうアーチストは可笑しな存在になってしまったんでしょうね」

 音楽の話題になると、深刻そうな表情に変わった。

「みんな、もう音楽のことを真面目に考えていないようです。以前はどうすれば思っていることを音楽で表現できるかについて悩んだものです。最近ではすべてのアーチストがどうしたら末梢神経を刺激できるかだけを考えています」

 李スンファンは「私に対する関心も最近は、音楽ではなくガールフレンド(チェリム)に向けられている」とぶつぶつと話した。

 話が出たついでに聞いてみると「結婚はしようと思っているが、いつするかは決めていない」と、こんな風に語った。

 「ファンたちも…以前は『早く結婚して』なんて声が多かったんですが、いざガールフレンドができると『裏切り者』、『悪い奴』などとそっぽを向いてしまうんですよ」

 インタビューの最中、舞台で練習をしていたバンドのベースやドラムの音が控え室にどんどんと響いた。李スンファンは「ライブはアーチストと観客が一体となって取り交わす一種のゲーム」と語った。

 李スンファンがそのゲームに勝ったのは明らかだった。来年には40歳になる李スンファンだが、30歳にも負けないパワフルな姿だった。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)記者
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