ついに忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)にもこんな監督が現れた。想像力の価値とは、その唯一無二の属性にあることを悟らせ、その想像力で新たな世界一つを作り上げることができる監督のことだ。
デビュー作『地球を守れ』(4月4日公開)でチャン・ジュンファン監督は、忠武路の弱点だったファンタジー分野で目覚しい成果をあげた。
それと同時に、現実に基づいた文明批判的なメッセージを鮮やかに描き出すことでも実力を発揮した。戦争のニュースが絶え間なく流れ続けている今、この映画のモチーフはただの寓話だけには見えない。
李ビョング(申河均(シン・ハギュン))は、自分を愛するスンイ(ファン・ジョンミン)と一緒に化学製品会社の社長、カン・マンシク(ペク・ユンシク)を拉致する。彼が地球を破滅させる宇宙人だと信じているためだ。
カン社長はビョングの家の地下室でさまざまな拷問に遭っている時、ビョングが過去に自分の会社で働いた職員だという事実を思い出す。
『地球を守れ』の核心テクニックは、アイロニーを引き起こすことと、知らん振りをすることだ。
監督は一つの場面で二つの以上の情緒を衝突させたり、とりとめのない状況をわざと深刻な雰囲気で一気に描き、卓越した腕前を見せてくれる。
カン社長を拷問する最初の道具が(宇宙人の神経系を破壊する成分が入っているという)液状の湿布薬という設定は、この映画のスタイルをそのまま物語っている。
垢すり用のタオルで肌をむき出した後、ビョングとスンがカン社長の足に湿布薬をペタペタと塗る場面は、そのコミカルな動きと大声で叫ぶ悲鳴が絡み合い、奇妙なコメディーを作り出している。
あまりの衝撃に息絶えた相手の胸を、怒りに任せてでたらめに踏み付けると、心臓マッサージの働きをして生き返る場面のように、爆笑と同時に唖然とさせる感じを抱かせる場面が整然と並ぶ。
ただ、いくつかの場面の過度で異常な表現の数々は、観客の嫌悪感を誘うかも知れない。
この映画は内容と形式が互いに相反し、テキスト(特定場面)がコンテキスト(文脈)に衝突しながら、今までの韓国映画では見られなかった奇妙な風景の中へ観客を誘う。
主演の三人は自分たちの隠れた資質を正確に指摘してくれた適切なキャスティングで、作品に合った演技で応えた。
ムードある『オズの魔法使い』のテーマ曲をまったく合わない場面に使うなど、音楽を劇中の状況と背馳させ、『2001年宇宙の旅』から『ブレードランナー』、『殺しのドレス』までもパロディにしたような楽しさを兼ね備えたこの映画は、口うるさい映画通にとっての「ボーナス」となるだろう。
重いメッセージが溌剌とした想像力をしきりに邪魔するのではないだろうか。
この作品のB級映画的な「宇宙人的想像力」に魅せられるほどに、A級映画的なテーマが強調される中盤以降には、そんな疑問が徐々に湧いてくる。
しかし、深く印象に残る素晴らしいクライマックスの後には、憐れみに溢れた視線が、もっともらしく白をきる話術に劣らず、チャン・ジュンファン的な特徴だったことを認めざるを得なくなる。
もしかすると、チャン監督がティム・バートンやデビッド・クローネンバーグと分かれる地点は、もう既に通過しているのかも知れない。