『ああ、そはかの人か~花から花へ~』、『プロヴァンスの海と陸』、『乾杯の歌』…。
19世紀のパリ社交界の花、ヴィオレッタと貴族青年アルフレードの愛を美しい歌と共に描いたヴェルディの『椿姫』は、世界のオペラ舞台で長年、愛されている作品だ。
今回は日本のオペラ団が史上初めて来韓し、『椿姫』をソウルで公演する。
日本を代表する「藤原歌劇団」が芸術の殿堂オペラ劇場で『椿姫』を28~30日に公演する。これに先立ち、芸術の殿堂がオペラ劇場の開館10周年を記念して制作したオリジナルの『椿姫』も15~21日に同会場で公演され、「韓日オペラリレー」を行う。
日本版『椿姫』には指揮者の広上淳一をはじめ、ヴィオレッタ(ソプラノ)役にギリシャ出身のディミトラ・テオドッシュウと日本の出口正子、アルフレード(テナー)役に市原多朗など、藤原歌劇団の150人が登場する。
藤原歌劇団の今回の来韓は、李永朝(イ・ヨンジョ)作曲のオペラ『黄真伊』を2001年4月に東京で公演した韓国オペラ団(朴起賢(パク・キヒョン)団長)の招きで実現した。
今回の公演では広上淳一がコリアンシンフォニーオーケストラを指揮し、テナー歌手の朴ギチョン(アルフレード)とバリトン歌手の崔鐘寓(チェ・ジョンウ/ジェルモン)が加わり、韓日両国の文化交流の意味も兼ねている。
コリアンシンフォニーオーケストラとの練習のため、13日に来韓する広上淳一に電話インタビューした。
-初来韓する感想は?
「韓国の音楽文化は相当なレベルだ。私だけでなく、日本に多くのファンを持つ指揮者の鄭明勳(チョン・ミョンフン)さんの国で日本のオペラを披露できることになってうれしい」
広上淳一は今年で43歳になる次世代を担う指揮者の一人だ。
東京音大の指揮科を卒業後、84年にキリル・コンドラシン国際指揮者コンクールで優勝し、フランス国立交響楽団、ロンドンフィルハーモニック、ベルリン放送交響楽団、NHK交響楽団、モントリオールシンフォニー、オスロフィルハーモニックなど、世界有数のオーケストラの指揮を執っている。
オペラではオーストラリアのシドニーオペラ劇場で『仮面舞踏会』と『リゴレット』を指揮して好評を博した。
-藤原歌劇団版『椿姫』の特徴は?
「『椿姫』は藤原歌劇団が宝物同然に大切にしているレパートリーだ。毎年1月に、新春恒例公演として上演し、実績を積んできた。ヴィオレッタ役のソプラノ2人とアルフレード役の市原多朗に特に注目してほしい。市原は日本音楽コンクール第1位、ヴェルディ国際コンクール第2位(1位なし)、 フランシスコ・ヴィニャス国際コンクール(スペイン)第1位などを授賞し、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で主役を務めるなど日本を代表するテナーだ」
藤原歌劇団は1934年に東京で創設され、日本初演作品を含む70余のオペラを上演してきた。1981年に日本オペラ協会と合併し、新たに設立した財団・日本オペラ振興会内で西洋オペラを担当している。
-パリや札幌のパシフィック・ミュージックフェスティバルで活躍する佐渡裕など、日本の若手指揮者が世界の舞台で頭角を現している。日本の指揮者界の層は?
「30~40代の指揮者層が厚い。新進著しい若手指揮者や各地に点在するコンサートホールをはじめ、熟練したオーケストラ団員が日本の交響楽界を支える力だ。私もまだスタート段階だ。野球で言えば、米大リーグに進出して間もなく有名になったイチローや松井のようなもの。これからの努力が重要だと考えている」
広上淳一は藤原歌劇団が今年1月に東京・Bunkamuraオーチャドホールで『椿姫』を公演した際、東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した。会場で目にした広上の指揮は、華やかな動きが際立っていた。小柄な体で、ややオーバーなほどの身振りで、喜怒哀楽を繊細に表現していた。
日本で情熱的な指揮で知られる広上が「大陸的」な情熱を秘めた韓国のオーケストラと出会い、描き出す『椿姫』はどんな魅力を放つのか。金曜・土曜午後7時30分、日曜午後7時。問い合わせ(02)587-1950~2。