流れる水のようなピアノが続く小編成の弦楽合奏、そして「愛を忘れて~」と歌う曲…。
「やっぱりチョ・ソンモの歌だ」と思って聴いていると、中盤あたりから突然ロッカーのように声を張り上げる。
「あれ?これってチョ・ソンモ?それとも李スンチョル?」という声が自然に漏れる。
チョ・ソンモ(26)が5thアルバム『歌人』で、今までの美声を捨ててシャウトを披露している。タイトルトラックのバラード『ピアノ』でさえ、チョ・ソンモはハイトーンボーカルでロッカーのようにシャウトし、まったく新しい姿を見せている。
「変化も必要でしたし、パワーのある声が必要だったんです。1年以上かけて試行錯誤を繰り返しながら練習してきました。今まで直球だけを投げてきたとすれば、今はカーブのような変化球を身に付けた感じです」
「変化も必要」という一言に、無名の新人をミリオンセラーに育てた前所属事務所との訣別と、その過程で行われた訴訟、記者会見まで開いて涙を見せなければならなかった苦痛の意味が込められている。
「ファンの皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ニューアルバムもどんどん遅れてしまって…。本当に申し訳ない限りです」
チョ・ソンモは「苦しくなるほど、歌いたい気持ちでいっぱいになった」と語った。
「歌手という職業が本当に甘くないんだなと実感しました。自分は今までとても楽をしてきたようで…。これからは自分が選択して、すべての責任も自分で負うことになったので…後悔はないです」
チョ・ソンモはそんな思いを『君だけだから』の歌詞に込めたという。
日本の元X-JAPANのメンバー、YOSHIKIが作曲したこのロックバラードは、チョ・ソンモが先月1日、NHKの創立50周年記念コンサートで歌った曲でもある。チョ・ソンモはこの曲を「一番思い入れがある曲」と話した。
チョ・ソンモはニューアルバムで、速いテンポの曲を大幅に減らした。「ダンスも自信ないので…」と話すが、ロックバラードにすっかり夢中のチョ・ソンモにとって、今は激しい電子音の「ダンスミュージック」には特に興味がないようだった。
「今、私にインスピレーションを与えてくれる曲は、ゆっくりしたテンポに生楽器で演奏した音楽です」
もちろん『愛する時に捨てなければならないいくつかのもの』といったハウスナンバーでアルバムを盛り上げ、『パートナー』のようなラテンのリズムに、ブラスやパーカッションを取り入れたラテンダンスナンバーもある。
これらの曲でもチョ・ソンモは別人のような新しい歌声を聴かせてくれる。逆に以前のチョ・ソンモスタイルの歌が聴ける曲は『愛は常に再びやってきます』だけだ。
チョ・ソンモが才能を発揮している曲は、もっぱらアルバムの後半に隠されている。ジャズの名曲『Fly To The Moon』をボサノバとスイングで編曲したこの曲で、チョ・ソンモはジャズボーカル特有の深みのある唱法を上手く消化している。
「フランク・シナトラが歌ったこの曲が一番好きです。彼のスタイルや音楽に対する態度を学びたいです」
チョ・ソンモは「ポッペラ(ポップとオペラを融合したジャンル)」にチャレンジしたい様子だった。今回のアルバムのように変身ができるのなら非常に期待できる。
チョ・ソンモは「『オペラ座の怪人』の『All I Ask of You』のような曲が歌いたいです」と語った。