「独自の画風を確立したい」漫画家ピョン・ビョンジュンさん

 『走れ、ポングよ』(ピョン・ビョンジュン/キルチャッキ)を読む。白黒とカラーのリズムを吟味しながら繰り返し読む。すると、作者に会いたくなる。

 2000年に文化観光部主催の『今日の韓国漫画賞』大賞、2001年に日本の小学館の新人漫画賞という輝かしい実績を挙げ、何よりもペ・スアの短編小説『プリンセスアンナ』を漫画化した前作で、漫画界内外に波紋を投げかけた31歳の若い作家に。

「今でも実験中ですが、私独自の絵と線を持ちたいです。ヨーロッパや日本のスタイルでもありません。今回の作品は非産業的なストーリーと絵で、出版社もだいぶ困っているようです」

 出稼ぎのために上京し、その後、消息が途絶えた夫を捜しに全羅(チョルラ)道・海南(ヘナム)から、何の当てもなしに上京した妻のトンシムと息子のポング。行方の分からなくなった父を探し回り、慣れないソウルのあちこちをさ迷う親子にとってこの巨大都市はあまりにも冷たすぎる。

 一度も乗ったことのない電車、車内で物乞いをするホームレスの老人とゴミ箱から食べものを探す孫娘のヘミ、薬を売る商人、そしてこれらを毎日当たり前のように目にしながらも無関心なソウル市民…。

 作家はこうした乾いた風景を冷たい視線で描き出しながらも、幼いポングとヘミを通じて希望の芽を育む。ポングとヘミの出会い以前は白黒で処理し、それ以降はカラーで処理する編集方法を通じ、読者が数歩距離を置いてこの世俗都市の非情さと可能性を同時に見渡せるように描いている。

 アルンダウン財団常任理事の朴元淳(パク・ウォンスン)弁護士は「心に染み入るようなリアルさや、悲しくはないが心を動かす力。冷たく淡々とした都会の中の人間愛と素朴な希望。これがこの小さな本の魅力ではないか」と説明する。

 事実、『走れ、ポングよ』は、既存の漫画界の出版習慣からは生まれにくい本だった。ストーリーが完成した時、多くの出版社は揃って(非産業的という理由で)拒絶し、100ページ前後で1冊という本は、不況の漫画界の現実にはそぐわなかった。

 文化コンテンツ振興院の創作支援を得られなかったら、読者はこの素朴ながらも意味のある1冊に出会えなかっただろう。その中には「背景をアシスタントに任せることができる他の漫画家らが羨ましい」と言うほど、自ら一つ一つ刻んだペンタッチや、人生や世の中に対する鋭い作家の目が光っている。

魚秀雄(オ・スウン)記者
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