またもやお涙頂戴の…それでも美しい『菊の花の香り』

 パートナーが不治の病にかかり、この世を去る姿を描いた映画はありふれている。しかし、よくある「お涙頂戴式のラブストーリー」と烙印を押されるのを望む映画はない。

 『手紙』はこの世にいない夫から送られてくる手紙、『ラストプレゼント』は笑いの裏に悲しみを潜ませる話法で、その轍を踏まずにすんだ。

 映画『菊の花の香り』(28日封切り)は、2年前に出版され、100万部以上のベストセラーを記録した小説を原作にしている。大衆的な人気を得たという点では、すでにヒットが検証されている作品だ。しかし、同語反復という「毒」を避けなければならなかったのがこの映画の課題だった。

 イナ(朴ヘイル)は、読書サークルの先輩のヒジェ(チャン・ジニョン)にその思いを告白する。ヒジェは「ただの一瞬の感情」と言い、はっきりと断るが、イナはヒジェを忘れられない。

 月日は流れ、ラジオ番組のパーソナリティーとなったイナは、毎週木曜日に「ブックマーカー」という名前でヒジェとの思い出を放送で紹介した。交通事故で両親と婚約者を一度に失ったヒジェは、本の表紙デザインをする仕事をしながら暮らし、ある日イナと再会する。

 李ジョンウク監督はデビュー作となるこの映画で、原作小説に負けている気がする。欠点一つないキャラクターで描かれたイナは魅力的だが、現実とはあまりにもかけ離れている。こんな人物に感動をするのは、まるで少女漫画のようだ。

 大学時代のイナとヒジェの思い出もとても希薄で、ヒジェがイナの愛情を受け入れるクライマックスも感情移入が難しい。

 最初から最後まで憂うつな映画で、実際に涙する観客は稀だろう。

 『菊の花…』は笑って涙するといったドラマの文法に相反している。しかし、ポストイットで作った木、木曜日、紙の国、車窓に映った木影、落ち葉、木のぶらんこ、韓紙など、木のイメージで愛情を表現した点は美しい。

 ストーリーが荒いながらも穏やかで叙情的な雰囲気を最後まで演出しているのも魅力的だ。感情の起伏が激しい役を演じたチャン・ジニョンと朴ヘイルの演技も安定しており、本やラジオといった極めてアナログ的な素材に愛を重ね合わせた監督の底力は、次作を期待させる。

朴敦圭(パク・トンギュ)記者
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