「クリフさんが来る!」浮かれた50代の少女たち

 1969年10月16日。ジンミョン女子高の2年生だった朴ジスクさんは、学校には行かず、金浦(キムポ)空港に急いだ。この日、当時最高の人気を誇ったポップスターのクリフ・リチャードが来韓したからだ。

 「アイドルのために欠席」という前代未聞の事態に衝撃を受けたジンミョン女子高側は、この日、全校生徒に「特別指導」を行った。

 「どれほど大声を出したのか、何度も気絶しました」。彼女が空港で歓喜する姿は、当時の新聞に取り上げられた。そして34年の月日が流れた。

 今では51歳の主婦になった朴さんは、最近また高校時代に戻った気分でいる。クリフ・リチャードが来月7日、34年ぶりに来韓し、蚕室(チャムシル)室内体育館でコンサートを開くからだ。朴さんは早速チケットを予約した。「もちろん今回も空港に駆けつけます」という。

 18日、「クリフ・リチャード、ビデオコンサート」が開かれた大学路(テハンロ)カルトホール。朴さんをはじめ「CFC(クリフファンクラブ)」の会員40人余りが集まった。

 20代の男女も目立ったが、大半が40~50代の中年女性たちだった。彼女たちはすべての曲の歌詞を覚えて一緒に歌い、『All I Ask Of You』のミュージックビデオでクリフ・リチャードとサラ・ブライトマンの濃厚なキスシーンが流れると、あちこちからため息が漏れた。

 u韓国でまたクリフに会えるなんて思いもよらなかったです」。CFb代表のクォン・ミョンムンさん(53)は「ファンクラブの活動のおかげで、常に少女のような夢を抱くことができた」と語った。

 1965年に梨花(イファ)、ジンミョン、淑明(スクミョン)、京幾(キョンギ)、チョンシン女子高の1年生10人が集まって作った韓国初で最古のファンクラブは、今年で38年目を迎える。


 会員数は約370人。親子で加入しているケースもかなり多い。海外のクリフ・リチャードのファンクラブと連絡を取り、資料を収集し、映像やアルバムをすべて揃えた。

 ソウル市・桂(ケ)洞にあるファンクラブの事務所は、69年当時の話で盛り上がった。「クリフが来た日、空港で体のサイズを測って、帰国する日に韓服を作ってプレゼントしたんです」

 「クリフが来韓した時、ソウル駅前にちょうど大宇(テウ)ビルが完成しました。それを見せようとバスがソウル駅に戻ったんです」

 「ファンクラブのボランティアも私たちがすべてやりました。漢南(ハンナム)大橋がまだなかった頃に、漢南(ハンナム)洞から船に乗って鴨鴎亭(アックジョン)洞保育園に向かい、ボランティア活動をしました」

 CFCの活動が活気づくようになったのは、昨年5月にホームページ(www.cliffrichard.co.kr)を開設してから。

 「ソ・テジが好きな娘に『クリフのファンクラブが元祖なのよ』と言っても信じなかったのに、ホームページを見てからは納得しました」(金ミョンファ/52)。

 熱心なファン6人は昨年11月に英国で行われたクリフのコンサートにも行った。「ロンドン公演2回だけのつもりが、そのまま帰るのがもったいなくて。それで他の都市の公演にも2回行きました」

 ユン・ヘウォンさん(54)は「その時、クリフ・ワイン(ポルトガルにあるクリフのぶどう園で作ったワイン)1本を持ち帰り、会員のみんなと一口ずつ飲んだ」と話した。

 CFCの会員に「なぜクリフ・リチャードなのか」とたずねると、「愚問」という答えが一斉に返ってきた。「クリフはライブの方がCDより断然いい歌手です。商業的なものを感じさせない人ですし。常にいい音楽を作ろうと努力し、慈善活動も積極的に行う人間的な魅力に惹かれたからです」

 「クリフ・リチャード梨花女子大公演」で最もセンセーションを呼んだ「下着騒動」についてたずねると、「とんでもない話」と口を揃えた。「誰かがレースのついたハンカチを舞台に投げたんです、汗を拭くように。それが誤って伝えられたんです」

 ファンクラブの会員約10人は、ソウル公演に引き続き、3月10日の東京公演にも行くつもりだ。

 この日、ビデオコンサートの解説を行ったDJの金光漢(キム・グァンハン/56)さんは「今回のクリフ・リチャードの来韓公演は、ファンクラブの中年女性を34年前の少女時代に戻らせるイベント」と語った。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)記者
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