笑みをプレゼントする「マジシャン教授」崔承俊氏

 「すごい!」

 今月12日午後6時、京畿(キョンギ)道・儀旺(ウイワン)市にあるミョンリュン保育院。この院で暮らす60人あまりの子供たちの視線は七色の帽子をかぶった白髪交じりのマジシャンの指先に注がれていた。

 赤いポケットに青いハンカチを入れたのに、そのポケットからハンカチの代わりに4つの赤いボールが出てくると子供たちは歓声をあげた。

 切れた紐が元通りになったり、トランプに書かれていた数字と模様が消えては再び現れたり、木の箱の中で消えてしまった黄色い箱が床に落ちていたハンカチの中から出てきたり、水に濡らした紙をうちわで扇ぐと紙ふぶきになって空中を舞ったり・・・。たくさんのマジックが披露される度に、子供たちは皆、驚きの声をあげた。

 子供たちが「鳩を出してください」と言うと、マジシャンは「鳩は風邪をひいているので今日は出てこれません」と笑い、20分あまりのマジックショーを終えた。

 このマジシャンは淑明(スクミョン)女子大学の崔承俊(チェ・スンジュン)音楽学部の学長だった。今年でマジック経歴も10年目を迎えるという。

 現在できるマジックは120種類あまりにもなる。始まりは淑明女子大の姉妹校である米国・ウエスタンミシガン大学のある交換教授が指を使ってマジックをするのを見てからだった。

 「面白いし、自分にもできそうだと思いました。周りでマジックができるという人に『紐を切って繋ぐマジック』、『ハンカチの下でライターをつけ、ハンカチの上に火が出ているように見えるマジック』など3種類のマジックを習い、会食の時に披露しました」と話す崔学長はもう見せるマジックがなくなってしまったので、テレビや本を見ながら1人で研究したという。

 「大人たちはどういう仕掛けなんだと納得がいかないような顔をすることも多いけれど、子供たちはマジックを見てとても喜びます。笑顔を忘れがちな保育院の子供たちに笑顔をプレゼントしたいと思いました」

 崔学長のマジックショーは学校の忘年音楽会など大きなイベントの恒例となった。外国で開かれる学会のリセプションなどでも披露しているという。

 昨年5月、ロシアで開かれた学会に参加するために飛行機に乗ったが、10時間という搭乗時間があまりにも退屈で、同行していた人々にマジックを披露したが、後ろに座っている人も見えるように前に出てして欲しいというリクエストを受け、機内で即席のマジックショーを行ったこともあった。

学生たちの間でも断然人気だ。学部の4年間、崔教授の授業を受けたという大学院生の安映信(アン・ヨンシン)さんは、「授業中にもよくマジックを披露して下さるんですが、マジックを見た後は集中力がよくなるような気がします」と話した。

 同僚の教授たちが謝恩会などの行事で個人芸として使うといって、マジックを習いに来ることもある。

 音大の教授であるだけに、普通とは一味違う、音楽とよく似合うマジックを披露する。マジックをする度に、そのマジックに似合いそうな音楽も直接選んでいるという。

 マジックに必要な小道具は龍山(ヨンサン)の電気街などで買い込んだり、外国で留学中の弟子たちに頼んで仕入れてもらっている。服装もチェックや深紅を固執するなど、神経を使う部分だ。研究室にはマジックの道具の入った箱が常時、準備されている。

 「最近、最高の人気を博している新世代マジシャン 李ウンギョルが“テクニック”を重視するマジックをするならば、私は“演出力”を重視したマジックをやります。周りでは『停年しても仕事があって羨ましい』と言ってくれます。誰もがマジックのような人生を夢見ます。しかし、マジックも結局は練習と努力なしでは駄目なんですよね」。

金承範(キム・スンボム)記者
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