米ニューヨーク・マンハッタンの、とある眺めの良いビルで1年近く匿名の生活を楽しんでいる漫画家のチョン・ゲヨン(33)が、300枚を超える分厚い「手紙」を送ってきた。小説『The Club』(時空社)だ。
『アンプラグドボーイ』、『カムバックホーム』、『オーディション』の3作品で90年代に多くの韓国の漫画ファンを魅了したこの才気煥発な作家は、自身の4作目を漫画の代わりに小説で発表する多芸多才さを見せてくれた。
「漫画家が書いた小説」という点だけでも他に類を見ないが、若い世代の心理を台詞とナレーションを通じて描いているユニークなスタイルが新鮮だ。
チョン・ゲヨンは「ノートパソコンを広げて『The Club』の最初の一行を書き始めてから一気に仕上げた」としながら、「何日もの間、寝て食べてトイレ行く時や猫に餌を与える時以外は一度もタイピングする手を休めなかった」と語った。
『The Club』は10代の頃に誰もが一度は感じた自分に対する省察を「ミステリー成長小説」というジャンルで描き出した記録だ。
渡米前に本棚を整理している時、「加入条件:自分のペットを殺すこと」というメモを偶然に見付けたという作家は、これをきっかけにした神秘的なクラブの話を文章にした。
その中には異性に対する熱望、現実と幻想を混同する思春期の特徴がそっくりそのまま描かれている。
本格的に文学を学んだこニのない作者だが、漫画の演oを通じて身につけた場面転換や率直な言語の数々が感情の共振をもたらす。各所に現れている作家の遊び心たっぷりの文章を発見するのも楽しい。
チョン・ゲヨンは「漫画家が書いた小説」についてこう話した。「誰でも音楽ができるという信念が『パンク精神』を生んだように、私が書いたこの小説もそうした精神で書かれたと思ってくれれば良い」と言う。
「誰もが日記や手紙を書いてもいいように、誰でも小説や漫画を描いてもいいと思う」としながら、「ただ単に文章を書くことが好きで書いただけ」と語った。
チョン・ゲヨンは2001年11月に渡米した。『オーディション』の作品終了と共に人気絶頂の時期に何の説明もなく「勉強と休息」を理由に太平洋を渡ってしまった。
多くのファンを抱えた韓国のスターとしてではなく、あくまでも一個人としての自由を満喫しながら異国でのリフレッシュ期間を過ごしている。
もしかしたらこの小説も、作家にとっては次の漫画作品のための「息抜き」なのかも知れない。作家が見付けた米国ならではのイメージの数々が写真で「おまけ」のように紹介されている。