「人種が違っても情緒は通じると漠然と信じていたんですが、私の考えに間違いはなかったようです。もう苦労したという話はしないつもりです」
今年のベルリン国際映画祭の児童映画部門(Kinderfilmfest)に招かれた韓国映画『童僧(A little monk)』の試写会が10日、ベルリンのベルリナーレ・パラストで終了した時、会場で感想を述べたチュ・ギョンジュン監督(44)の声は震えていた。
今までの辛い思いが一気に込み上げてきたのだろう。彼の目には涙が浮かんでいた。
「お金ができれば人を集めて慌しく撮影して、すべてが底をつくたびに胸だけが痛みました。そうこう繰り返しているうちに4年間があっという間に過ぎました。テジン(少年僧役の金テジン)も何をそんなに急いですくすくと育ったのか…」
監督は食欲旺盛で、栄養ドリンクまで飲む金テジン(14)を見るたびに心が痛んだ。いつ完成するかも分からない映画の主人公である少年僧が、あまりにも大きくなってしまえば、それこそ“絶体絶命”だったからだ。
企画段階から含めて『童僧』は、7年越しで完成した映画だ。母親をがんで失い、落胆していた頃に咸世徳(ハム・セドク)の戯曲『童僧』を読み、「懐かしさ」という普遍的な情緒を土台に、人々の感情を刺激する映画を作ってみようと始めたが、本当に多くの時間を要した。
監督は「父の家を担ロにローンを借り、妻に内緒で住宅保証金を使い、観光バス会社を経営する友人やレストランを経営する先輩から借金して7億ウォンを集めた」としながら、「多くの人に迷惑をかけたので、必ず成功しなければならなかったが、いつも上手くいかずに気がおかしくなりそうだった」と振り返った。
数年前、韓国映画に投資が集まった時期にも『童僧』はまったく蚊帳の外だった。高い借金を背負い、10枚のクレジットカードを駆使しながら何とか作ったこの映画に光が差したのは昨年のこと。
6月に行われた上海映画祭で脚本賞、10月のシカゴ映画祭で観客賞を受賞し、海外でスポットライトを浴びるようになったのだ。
チュ監督は「国内の上映館が決まらず、お蔵入りさせるくらいなら、海外でもいいから公開しようとしたのが奏効した」と打ち明けた。結局『童僧』は今年のベルリン国際映画祭に招待され、今年4月頃には国内公開を予定している。
『童僧』は小さな寺に住む少年僧が、自分を捨てた母を慕って悩み苦しむ姿を描いている。この日の試写会に訪れたリリアン・スファーさん(13)は「少年僧が泣いた時、私も知らないうちに一緒に泣いていた。吸い込まれるような美しい画面が印象的だった」と語った。
児童映画部門のトーマス・ヘイラー・ディレクター(43)は「重厚なストーリーに加え、演技力や映像美など全てにおいて優れた映画。感動で5分間言葉を失ったほど」と述べた。
「すばらしい映画は必ず認められます。決して埋もれることはありません。私がここまでやってこられたのも、その確信があったからです」。チュ監督の言葉に力がこもった。