「放送は必ず軽くて感覚的ではなければならないのか、どうしても納得できないんですよね。多少気まずくても“メッセージ”だけは残さなければという姿勢で原稿を書いています」
MBC-FM『ペ・チョルスの音楽キャンプ』の原稿をスタート当時から手掛けている作家の金ギョンオクさん(43)が、この番組のオープニングコメントのみを268回分集めた『幸せなラジオ』(イルパ刊)を最近出版した。
ローリングストーンズの『Satisfaction』をBGMにペ・チョルスが読む原稿用紙で2~3枚ほどの金さんのオープニングコメントは、他のラジオ番組とは確かに一線を画す。
午後6~8時の時間帯にも蘇東坡、『金瓶梅』といった比較的重めの素材を主に扱い、難解な文語体や古語を用いるのが特徴だ。
しかし、「寒い」ギャグのようなユーモアもたまには扱う。「ミミズと人間の共通点は、音楽好きで、曇りの日の雰囲気に弱くて、底抜けのお人好しを好む」といった具合に…。
インターネットのファンサイトやサポーターなどのファン層も厚いが、痛烈な批判も時々受けるという。「ロット宝くじについて『一攫千金は災いを催す』と話すと『庶民はそれくらいの夢も見たらいけないのか』って言うんです。そんな時は『そういう考え方もできるんだ』とあまり気に留めません」
「“書き物の哲学”はそもそも持っていないし、“リスナーを虜にする”のための重圧は無視しようとしています。それほどプレッシャーを感じずに『70点くらいもらえればいいや』とリラックスすれば、もっと満足できる文章が浮かんできます」
金ギョンオクさんは雑誌記者、放送作家を経て、90年3月に同番組の制作チームに合流し、出産などで休んだ約3年間以外は続けてオープニングを担当してきた。
金さんは若年リスナーを主なターゲットに設定した放送初期の趣旨に合わせ、良書紹介などの“教養分野”も充実させた。
スタート当時は「もっても精々3年くらい」と思っていた金さんは、著書でも表現したように「記憶の絶え間ない声」を今日も発信している。