『猟奇的な彼女』の郭在容監督の新作『クラシック』

 監督が伝えたいことが多すぎれば、観客は消化不良にもなり得る。郭在容(クァク・チェヨン)監督の野心作『クラシック』(30日公開)は、監督の多彩な才能が惜しみなく発揮されている映画だ。

 郭監督が『猟奇的な彼女』で披露したコメディー的な感覚と初期作品の『雨降る日の水彩画』で見せたラブストーリー的な感受性、そしてアクション映画に挑戦したかった監督の長年の熱意がこの映画に込められている。

 映画は1960~70年代の母親の恋と、2000年代を生きる娘の恋を交錯させる。大学生のチヘ(ソン・エジン)は、友達のボーイフレンドで先輩のサンミン(チョ・インソン)に思いを寄せるが、その思いを告白することができない。ある日チエは屋根裏部屋から母親のチュヒ(ソン・エジン/1人2役)の日記と手紙が入った箱を見付け、母親とジュンハ(チョ・スンウ)が青春時代に恋人同士だったことを知る。

 『クラシック』が描くラブストーリーは、まさに“クラシカル”だ。映画は黄順元(ファン・スンウォン)の 小説『ソナギ(夕立ち)』をスクリーンに移したような叙情的な場面から始まる。チュヒが転んで足をけがしてジュンハに背負われる途中、番小屋で雨宿りをするなど、主人公が愛を育む過程もオーバーなくらいに純粋だ。

 しかし、始まって間もなく映画はあまりにも“オーバー”なコメディーに変身する。初々しかったチュヒが突然狂ったように踊るかと思えば、おならの音を聞いて歌を当てるといったドタバタ喜劇も飛び出す。

 そうこうしているうちにジュンハがベトナム戦争に派兵される後半部になると、突如として悲壮美が漂う戦争映画になり、『雨降る日の水彩画』と『猟奇的な彼女』の間を行き来するような映画になる。

 『クラシック』の見どころの多くは、さまざまな趣向を持った観客を一気に吸い込むことにあるようだ。美しい映像は非常に丁寧に作られた印象を与える。ソン・エジンのか弱いイメージは“クラシカル”な雰囲気にぴったりで、チョ・スンウの演技も安定感がある。

 しかし、さまざまなジャンルを寄せ集めたために飛躍が繰り返され、登場人物の心理を一貫して理解するのが難しい。ラブストーリーが客席と共感できなければ、登場人物がいくら涙を流しても観客は遠くから眺める他ない。

李自妍(イ・ジャヨン)記者
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