歌手・李鉉雨「やっと自分の声を見つけた」

 李鉉雨(イ・ヒョヌ)がスピーカーから流れるような「ムード音楽」を減らし、声、演奏、コンピューターサウンドを駆使したヘッドホンで楽しめるアルバムをリリースした。

親しみやすいメロディーとハスキーボイス、独自のステージマナーでファンの絶大な支持を得てきた李鉉雨は、8番目のニューアルバム『痛み止め(Pain killer)』に収録された全14曲すべての編曲をテクノ系ミュージシャンの「Fractal」に任せた。

 機械が作り出す朦朧とした音の数々がヘッドホンの左右を行き交い、頭の中を貫くような不思議な感じを与える。

「ようやく私の音楽が“第2章”に移ろうとしています。今までにさまざまな音楽を試みて他のミュージシャンを参考にしてきましたが、やっと自分が求めていた音に出会いました」。

 自信一杯にこう語るのが、今回のアルバムの出来を物語っている。

タイトル曲の『Stay』は、映画『シュリ』の挿入歌として使われた『When I Dream』の導入部分をサンプリングした曲。



 聴きやすさを念頭に置いた曲で、スローテンポのヒップホップのリズムに李鉉雨のハスキーなラップと女性バックボーカルが絡み、魅力的な仕上がりになっている。

「最も気に入っている曲は『中毒』です。一番最後に作った曲で、私が追求するカラーに最も近づけた曲です」。

 『中毒』はミディアムテンポのリズムにロックギターが良く似合う曲。これに「エレクトロニカ」と呼ばれるコンピューターサウンドをふんだんに加えた。

 音を引っ張らずに刺々しい感じで歌う李鉉雨のスタイルが、退廃的な魅力を漂わせている。

 「甘い暗さ、とでも言いますか。都会の影のような音楽を表現しようとしたんです。暗いけれどカラリとしている、そんな音楽。説明になってますか?」

 4曲目『愛は死んだ』はニューアルバムの完成度を高めている。サンタナを連想させるハム・チュンホのラテンギターやコンピュータの効果音を遠近法のように配置し、李鉉雨のハスキーボイスの魅力が際立っている。7曲目『マスク』ではハードコア・サウンドにも挑戦している。

 シンガーソングライターの李鉉雨は最近、「ファット・ドッグ(Fatdog)」という自分のレーベルを作り、プロデュース業もスタートさせた。「ファット・ドッグ」は「いかした奴」の俗語。今回のアルバムは「ファット・ドッグ」の初作品だ。

 「後進を育て、いろんな実験をしてみたいんです。ダンス音楽に音楽シーンがかき回されたことが、返ってチャンスだと思います。まだ言えませんが、今年の夏ごろに女性シンガーを一人プロデュースする計画です」

 李鉉雨はアルバム1枚を出して解散するプロジェクトバンドにも関心を持っている。「自分のカラーを確立してからバンドを作りたいですね。ずっと活動を維持するのは大変なので、アルバムを1枚出して、コンサートも5回くらいやってから解散するようなバンドを作ってみたいです」

 ギターは誰、ベースは誰、と思い描くバンドメンバーの名前を挙げた。「そのメンバーじゃ今の声にはヘビーすぎるのでは」とたずねると、「智異(チリ)山にひと月くらいこもってボイストレーニングする必要がありますね」という答えがか返ってきた。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)記者
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