恵まれない人々のために音楽会を開く「声楽三銃士」

 崔乗元(チェ・スンウォン/42/テナー)、禹周昊(ウ・ジュホ/37/バリトン)、李ドンヒョン(40/テナー)。オペラなどの公演舞台で主役級として活動する3人の声楽家が団結した。崔乗元はニューヨークのメトロポリタンオペラコンクール(93年)で優勝し、米国で活動後、国内に定着したリリック・テナーだ。

 禹周昊はイタリアとドイツのオペラ舞台を経て、昨年、芸術の殿堂で行われたオペラ『オテロ』(ヴェルディ)と国立オペラ団の『戦争と平和』(プロコフィエフ)に出演したリリック・バリトン。

 李ドンヒョンは米国で活動し、昨年、芸術の殿堂で行われた『オテロ』で、タイトルロールを歌ったドラマチック・テナーだ。この3人が今年はソロ活動に加え、“トリオ”で舞台に立つ意欲を見せている。ソロでの公演は多いが、個性が強いために団結することの少ない声楽界で、3人の意気投合は特別な意味を持つ。

 「私たちは3人とも漢陽(ハニャン)大の出身です。みんな、当時は懐具合があまりよくありませんでした。一人暮らしの部屋でラーメンばかりを食べて、声楽家になる夢を見ていたのがまるで昨日のことのようですが、あれからもう17~18年の歳月が経ったんですね。今では3人ともそれなりに演奏者としての地位を確保したようなので、音楽で一つになろうと意気投合しました」

 最年長の崔乗元は「苦しい留学時代にも互いに助け合ってきたので、恵まれない人たちのために“トリオ音楽会”を開こうという気持ちが自然に一致した」と語った。3人の本格的な舞台は、花が咲き始める4月にスタートす驕B

 最初の目的地はロシア沿海州のハバロフスク(15日)とウラジオストク(18日)。高麗人(韓半島にルーツを持つ同胞)と現地ロシア人のために公演を行い、モスクワの舞台に進出する。続いて中国に向かい、上海(22日)と北京(25日)で公演し、5月にはエストニア共和国の音楽祭にも招待されている。

 トロント、バンクーバーなどのカナダ4都市を回るツアー公演も5月に行われ、6月には韓国人の米国移民100周年を記念し、ニューヨークなどの全米5都市で公演する予定だ。

崔乗元さんは、子供の頃に小児まひを患った身体障害者。4月のロシア沿海州での公演に先立ち、ソウルで障害者に車椅子を寄贈するチャリティー音楽会も“トリオ”で行う予定だ。

 「在外同胞を支援してきた南ソウル恩恵教会の洪正吉(ホン・ジョンギル)牧師から、スターリン時代に中央アジアに強制移住させられた高麗人が、ソ連崩壊後に沿海州に戻ったものの、定着するのに苦労していることを聞きました。何とか高麗人を助けたいと悩んだ末、昨年10月にウラジオストクとウスリースクで初めて3人で公演しました。『ふるさとの春』を歌った時は、聴衆が涙を流しながら一緒に歌いました。高麗人が『ロシア人にもてなされたのは初めて』と喜んでいました」

 禹さんは「京義(キョンウィ)線の連結だと、沿海州を経済的観点だけで見ていますが、われわれ3人の公演は初の文化的試みで、だから反響を得た」と自ら評価した。そのため2003年にはトリオ活動に全力投球し、相乗効果を最大限に引き出したいという。

 6月に開館予定のソウル市逸院(イルウォン)洞にある「陶磁宮殿(セラミック・パレス)」コンサートホール(440席)も、3人の夢を実現する舞台だ。自閉症児など情緒障害者の教育施設であるミルアル学校内に建設されたコンサートホールで、南ソウル恩恵教会が後援する施設だ。

 李さんは「小鹿(ソロク)島と孤児院を訪ねて歌を歌い、苦学する声楽志望者のためにインターネット無料レッスンも準備している」とし、「厚い友情と善意が結びつき、すばらしい成果を挙げるでしょう」と語った。

金龍雲(キム・ヨンウン)記者
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