『下線を~』の龍伊監督「胸に染みるユニークなメロドラマが目標」

 さっぱりと刈られた坊主頭でテレビを見ている若者。つまらなそうな表情で、ソファーに横たわりながら「映画を見せてくれて!」と叫ぶ。先月からオンエアされているこの移動通信会社のCMに登場する主人公は、俳優でもモデルでもない映画監督だ。

 現在、4月の公開を予定しているペ・ドゥナ、金ナムジン主演のロマンス映画 『下線を引く男』を撮影中の龍伊(ヨン・イ/29)監督。

 「CM業界の人々と普段から面識があって、このCMの構想中に私のつまらなそうな表情が浮かんだそうだ。映画とも多少関係のあるCMでもあるし…。いつもカメラの後にだけいるが、久しぶりに前に立ってみて、俳優たちの気持ちも分かるような気がした」

 龍監督は、携帯電話サービスの「UTO」 、ブロードバンドサービスの「メガパス-愉快・爽快・痛快編」 、「HanaFOS」などを手掛けたCM監督出身。

 カン・サネの『逆に川を上るあの力強い鮭たちのように』、朴ファヨビの『涙』などのミュージックビデオも演出した。

 CMディレクター時代には、ビールのCMに、朴重勲(パク・チュンフン)の背後で踊るバックダンサーとして直接出演し、振付までした。この隠された才能の持ち主が、忠武路(チュンムロ/韓国映画界の中心地)に跳び込み、“新しい映画”に挑戦している。



 だが、1時間を越える映画の演出は、15秒のCMとはわけが違った。「CMは監督の思い通りに出来上がる確立が高いのに比べ、映画は監督ひとりでどうにかなるものではありませんでした。時間当たりの費用で比べればCMよりはるかに制作条件も悪いし…。力加減が必要なジャンルだということがわかりました」

 静かな語り口の龍監督は、照れ屋な性格だ。「龍伊」という珍しい名前は、親から授かった本名だという。スキンヘッドもいつものスタイルだ。「いつだったかドレッドヘアに失敗して、その翌日に頭を丸めたんですが、映画に集中する意味もかねて、それ以来ずっと短くしています」と説明する。

 「映画はずっとやりたかったことです。学生時代は香港ノワールに熱中して過ごしたし、今回の映画にも自分の好きな作品へのオマージュ(敬意)を随所に散りばめました」

 映画に潜むのは、巨匠に対するオマージュにとどまらない。明け方に電話中、インスタントラーメンが食べたいというヒョンチェ(ペ・ドゥナ)の言葉に、トンア(金ナムジン)がラーメンとバーナー、携帯用鍋を自転車に乗せ、何時間もかけてヒョンチェの家に向かう劇中のエピソードは、龍監督自身の体験だ。兵役中、李文烈(イ・ムンヨル)の小説『狂った愛の歌』の全文を紙に書き写して彼女に送った経験のある龍監督は、「愛にまつわるエピソード」ならアイデアに事欠かない。

 「結局、人生で最も重要なものは愛だと思うんです。この映画では、同年代の人なら誰でも経験したようで、全く新しいラブストーリーを描いています。

正統派の恋愛映画や爆笑もののコメディではないですが、胸に迫る印象的な恋愛映画になると思います」

李自妍(イ・ジャヨン)記者
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