俳優の車仁杓「中国進出を機にアジア・スターを夢見る」

 彼は最近、ドラマにも映画にも登場していないが、何かとマスコミに取り上げられる。年齢も30代半ばに差しかかり、すでに結婚もし、何カ月も国内にいないにも関わらず、若い層から絶大な人気を得ている。芸能界の「徴兵忌避」や「離婚」などが取り沙汰された時にも、比較対象として必ず彼の名前が挙がる。

 車仁杓(チャ・インピョ/36)。彼は“美しい青年”という愛称で多くの人に親しまれている。スターらしからぬ謙虚さと人間性に溢れ、いつも真っ直ぐで堂々としていると知られているためだ。3月公開予定の車仁杓主演の映画『ボリウルの夏』の関係者は、彼がたびたびスタッフたちに夕食をおごったり、共演した二十歳の後輩女優にも、最後まで敬語を使ったという。

 最近公開されたハリウッド映画『007/ダイ・アナザー・デイ』が、韓半島の現実を歪曲していると物議をかもすと、この映画への出演オファーを断った車仁杓は、再び“国民的英雄”になった。中国でドラマ撮影中で、今回一時帰国した車仁杓と大晦日に会った。

 「007」の話を切り出すと、車仁杓は「本当にプレッシャーになる」と溜息をついた。「ただ個人的に気が向かず出演しなかっただけで、何か大きな使命感を持って決めたことではありません。私もはじめは『やるか、やるまいか』と迷いました。出演しなかったから愛国者ということは、出演していたら売国奴ということになるじゃないですか」


 しきりに謙遜する車仁杓は、米国の永住権を放棄したことも「早く結婚して家庭を持ちたかっただけ」と強調した。「とても個人的な選択に対して、ものすごい愛国者のように過大評価されるので、何か発言するにも気を使います。俳優は演技で評価をされなければなりませんが、私が本当に俳優なのかと思ってしまいます」

 しかし、これがまさに車仁杓の魅力なのだ。彼の考えと行動を社会現象にする力だ。車仁杓は映画出演を決断する時は人一倍悩む。車仁杓がシナリオを読んで断った映画は“大ヒット”を記録し、心惹かれて出演した作品は、すべて興行的に失敗したからだ。

 「私が出演を断った作品は、後でもう一度見てもやっぱり面白いとは思わないんです。ところが観客はたくさん集まるんですよね」

 『ボリウルの夏』は、そんな車仁杓が「今度こそは」と信念を持って選択した映画だ。ボリウルという田舍の村に新しくやって来た若い神父が、孤児院の子供たちにサッカーを教え、寺の住職が率いる村の子供たちと試合し、後に一つのチームになって町の子供たちと対戦するといった内容。車仁杓はサッカーと子供たちを愛する若い神父役を演じた。

 「2カ月半の間、撮影をしながら本当に幸せでした。空気の綺麗な所で毎日子供たちと遊んで、サッカーもして…」

 「先のことを考えるより、自分がやりたいことをやりながら生きていきたい」という車仁杓は、最近、中国で中国・台湾合作ドラマ『四大名捕』を撮影している。『四大名捕』は清を背景に4人の武士の活躍を描いた武侠劇だ。車仁杓は2カ月間休みなしで1日10時間近い撮影をこなしているが、「大変でも、いい選択だった」と断言する。

 「中国は想像以上に韓国に好意的です。それでも実際に中国語圏で活動する韓国人俳優はほとんどいない。アジアで認められる俳優になりたいです」

 契約する際に出演料を下げる代わり、ドラマの韓国での版権の40%を獲得した車仁杓は、ドラマ音楽も韓国で制作することを提案した。「どの国で放送されようと、韓国で作った音楽が流れるといいなと思ったんです。中国でも最初は外国人俳優を1人迎えた程度に考えていたようですが、今では私をパートナーとして見ています」

 最近は時間さえあれば中国語を練習しているという車仁杓。「年男」の車仁杓は未年の2003年を迎えてどんな世界を夢見ているのだろうか。

 「車が減ってくれたらいいですね。もう少し潤いのある人生を遅れたらとも思います。それから、統一が実現してほしい。戦争の心配もなく、外国に依存しない国で生きたいです」

 車仁杓の話を聞いているうちに、映画の中に出てくる「ボリウル」村が頭に浮かんだ。夢見る世界で、なぜだか車仁杓は子供たちと一緒にサッカーをしているような気がした。

李自妍(イ・ジャヨン)記者
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