来年退官する宗教学の草分け鄭鎮弘教授

 宗教現象を学問の対象にして、本格的な研究を始めた国内第1世代の宗教学者、鄭鎮弘(チョン・ジンフン/65)ソウル大教授が来年2月に定年退職する。鄭教授は信仰の対象としてのみ理解されていた宗教に文学的なレベルで接近し、宗教を公的な議論の場に引き出した代表的な学者だ。

 「講義を終えると、私のところに来て教授の魂のために祈ります、という学生がいました。宗教学は学界と宗教界にとって“スキャンダル”(鄭教授はこの単語の本来の意味を『ネック』だと説明した)でしょう。学界では実在しないものをどうやって認識するのかと疑いを持ち、宗教界では信仰を分析することに拒否感を抱いたようです」

 クリスマスを3日後に控えた22日午後に会った鄭教授は「もともとキリスト教徒で、神学に関心を持っていた」と話した。しかし、ミッションスクールで聖書を教えながら、キリスト教の言葉が全ての学生に通じるものではないと実感し、心が揺れるようになったという。

 留学先の米サンフランシスコの神学大で宗教学者エリアーデの研究に没頭した。キリスト教・仏教・イスラム教など個別の宗教ではなく、「聖」と「俗」の世界に人間の経験を合わせる視点に共感したからだった。

 鄭教授にとって、暴力にまで発展する宗教間の葛藤は、他国の問題とは思えなかった。

 「韓国の文化は伝統的に和合と融和を強調しているため、宗教摩擦はないものとされていますが、イデオロギーの問題を発端とした韓国戦争の際には、同族同士で殺し合いました。宗教摩擦が爆発する余地はスい。宗教間の対話の土台を一日も早く築き上げるべきでしょう」

 鄭教授は宗教を無視する知識社会についても不満を持つ。「人口の半数以上が宗教を持っているのに、学者たちが宗教に関心を持たないのは、問題だと思います。もし国民の半数がいつも赤いTシャツを着ていたら、それを無視して研究することができますか」

 衰退の一路をたどる人文学の未来にも話は及んだ。「人文学は人間が自らの問題を正直に問うことができる学問」と規定した鄭教授は「今の人文学はこうした問いを自由にさせず、解答を受け入れるよう強要する学問になってしまったために危機に追い込まれた」と批判する。

 鄭教授は宗教もマルコス主義も「教条的な思惟」が問題だと指摘する。「現実認識よりも善悪の問題を先に判断し、規範的な当為性を優先しているでしょう」。まずは書き方から正す必要があるということだ。

 「大学でも簡単に、短文だけで書くことを勧めます。そうしたものが感嘆文、命令文、逆説のほかにありますか?現象を単純化し、規範的な当為が認識論よりも優先しているのです」。鄭教授は「退官後は教授職に就けない博士のために大学の講義も引き受けない」と語った。

金基哲(キム・ギチョル)記者
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