北朝鮮最高指導者の娘がソウルに現われた?

 クリスマスに公開される『口笛王女』(李ジョンファン監督)は、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の和解ムードからアイディアを得た映画だ。

 北朝鮮最高指導者の隠し子の娘と韓国の無名ロックバンドのメンバーが恋に落ちるというあらすじは、以前であれば想像もつかなかった素材だ。

 映画はこれに、南北和解ムードが作り出す“韓半島の民族主義”を恐れる米国内のタカ派による工作まで加えた。だが“南男北女”のロマンスと諜報アクションという構図で描かれたこの映画の完成度は決して満足できるレベルとはいえない。

 ヨーロッパで舞踊を学び、自由に育った北朝鮮の最高指導者の娘、ジウン(金ヒョンス)は、平壌(ピョンヤン)芸術団の首席舞踊家としてソウルでの公演を終えた後、セキュリティの網をかいくぐって韓国観光を試みる。この情報を入手した米CIAのタカ派がテロリストを雇い、南北間の深刻な葛藤を触発するため、ジウンを殺害しようとする。

 すると一時は不倶戴天の敵だった韓国国家情報院の警護チーム長のソクジン(朴尚民(パク・サンミン))と北朝鮮人民武力部特殊要員のサンチョル(ソン・ジル)は、南北共同チームを結成してジウンを捜索する。この真っただ中にジウンは、韓国人青年のジュンホ(チ・ソン)がリーダーを務めるロックバンドのメンバーと偶然に出会い、自由を満喫する。

 映画には重くなりがちな素材を軽く扱おうとする意図があちこちで見られるが、効果的な形象化には失敗している。いくら熱血漢だといって国家情報院の警護チーム長が北朝鮮警護チームとの酒の席で言い掛かりをつけて「そっちが先に挑発してきた。これは侵攻だ!」と言うような、リアリティーのない描写がもたらす失望の前で、愉快な笑いが起こるとは思えない。

 成長してきた背景に大きな差があるはずの北朝鮮の女性が、韓国人青年と出会っても意識や文化的な衝突は全くない。どうした訳か、北朝鮮の女性を韓国の若者たちと言葉や習慣的に何の問題もないソウルの女子大生のように描くことで、この映画の核心的な楽しさを台無しにしている。

 これに加えて“笑顔”以外に感情演技を十分にこなせなかった金ヒョンスの単調な演技が重なり、映画を決定的に退屈なものにしてしまっている。

シン・ヨングァン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース