ついにベールを脱いだ『007』 ソウルは登場せず

 韓半島と関連した描写が歪曲されたという論議の中、一部ネチズンの「映画観ない」運動の標的となっている大作『007シリーズ第20作・ダイ・アナザー・デイ』(31日公開)が13日、国内配給会社の20世紀フォックスの試写室で初めて公開された。

 インターネットでは「ソウルが火の海になる」という指摘もあったが、公開されたフィルムには「ソウル」や「韓国」は登場しなかった。

 しかし、歴代どの『007』シリーズよりもスケールが大きい今回の映画には、韓国人の気分を害するくだりが無くない。今回、世界平和を脅かす悪の勢力として登場するのは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)人たちだ。

 映画の序盤25分間の背景は北朝鮮となっている。北朝鮮で任務を遂行していたジェームス・ボンド(ピアース・ブロスナン扮す)が誰かの裏切りで捕まり、やっと開放される。ボンドはその後、香港や英国、アイスランドなどを股に掛け、裏切り者を探し出す。洋画としては珍しく、多くの韓国語(もちろん、北朝鮮のなまり)の台詞が聞こえてくる。

 20世紀フォックス側は「北朝鮮全体ではなく、一部の強硬派を悪と想定しているだけ」という立場だ。実際に北朝鮮軍の「ムン大領」は強硬派であるが、彼の父は息子に「お前がこのようなことをすれば、強硬派の立場が有利になるだけ」と諭す穏健派の北朝鮮人だ。

 しかし、「韓国語を使う悪党たち」を「英国のスーパーマン」が制圧するこの映画は、韓国人にとって観づらい感じは確かにある。ボンドとボンドガールがよりによって、仏像の置かれた部屋で情事を交わすくだりも、仏教信者なら眉をしかめるはずだ。ただ、当初伝えられたのとは違って、韓国式の寺院ではない。

 サイバー上で問題となった「牛をつれた農夫が通る前近代的な風景」も、ボンドが飛行機の中で危機に直面し、墜落した地点でのことなので、「韓半島」だと断定付ける根拠はない。

 全般的に『ダイ・アナザー・デイ』の韓国関連の描写は、韓国人の機嫌を損ねるくだりがなくはない。しかし過去、韓国を卑下、歪曲した容疑のあるハリウッド映画に対して、市民団体などが抗議したことはあっても、今回のように公開のはるか以前から観客たちが「観ない運動」を広めたことはなかった。

 今、私たちは映画を単にフィクションの芸術としてだけ楽しむには、あまりにも敏感な時代を生きている。

金明煥(キム・ミョンファン)記者
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