「ミュージカル・コンサート」を作り出す歌手趙容弼

 歌手がドラマに欲を出せば滑稽になるが、舞台演出に対する芸術家的なこだわりを誰が止めるのか。

 今月7日から芸術の殿堂オペラ劇場で公演を行っている趙容弼(チョー・ヨンピル)のコンサート『君の足が止まる所に』は、シンガーソングライターの趙容弼が、ミュージカルの演出家としてデビューしたような舞台だった。

 舞台の上に真っ赤な太陽が燃えるように現れ、いつのまにか鬱蒼とした森に木の橋が静かに現れるなど、SF映画の迷路のような装置が舞台の上下左右を埋め尽くした。これらのすべては趙容弼のアイディアだった。

 1曲目の『太陽の目』で登場した趙容弼は、あいさつの言葉もなく、2時間30分間にわたって歌い続けた。曲の雰囲気が変わる度に舞台も変化していった。舞台全体を覆った超大型の半透明スクリーンに巨大な波の映像を映し出し、その後ろでスポットライトを一身に浴びた趙容弼が『生命』を熱唱する姿は、まさに圧巻だった。趙容弼が予め4階席の隅々までチェックしながら設置したスピーカーの音が劇場全体を包み込む“音のスペクタクル”を演出した。



 4歳から小学生までの子供10人が趙容弼と共に『ソムジプアギ』、『パンダル』などの童謡から、1988年の曲『宇宙旅行X』を歌った時は、ミュージカルそのものの雰囲気だった。2300席を埋めた観客の口元を見ると、満ち足りた笑みが浮かんでいた。

 最後の曲ではじめて趙容弼は口を開いた。「今日のテーマを『道』と決めて、人生について歌ってみました。生まれてから恋をして挫折し、幸せで、悲しい、すべての感情を私の歌で語ろうと思いました」。多くのヒット曲がレパートリーから外れたのもそのためだという。

 客席からアンコールが沸き起こった。「『虚空』を歌って!」「『恨五百年』!」「『窓の外の女』!」とファンは叫んだ。趙容弼は「リクエスト曲には応えないつもりだったが…」と言いながらも、再びマイクを手に取った。

 『夢だったと/思うには/あまりにも未練が残り…』。当初は14日までの予定だった公演は、ファンの強い要望により15日までに延長されたが、すぐにソールドアウトになった。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース