『酔画仙』で撮影賞受賞した鄭一成監督「心で心を撮る」

 林権澤(イム・グォンテク)映画を20年にわたって撮り続けてきた最古参の撮影監督、鄭一成(チョン・イルソン/73)氏が12日、第23回青龍(チョンリョン)映画賞の授賞式で撮影賞(『酔画仙』)を再び受賞した。

 同世代の仲間たちは既に引退して孫の面倒を見るような年齢だが、鄭一成撮影監督はカメラと共に全国の津々浦々を歩き回る元気な現役だ。少し前、ヤングカジュアル衣類のCMに高素栄(コ・ソヨン)や全智賢(チョン・ジヒョン)と共にモデル出演もした。歳を取ることを知らない“70代の青年”に授賞式のあった12日に会った。

 普段から原色の服を好んで着ているという噂通り、鄭一成監督は赤のハイネックニットで登場した。「あなたの撮った映画はじめじめとして暗いが、服はとても明るい色を着ていると話す人々もいますね。歳を取って顔色が悪いので明るい色の服を着てしまうんです」(笑)

 鄭監督は「私は映画を撮りながら、歴史性や社会性をよく表すことができる色彩を主に画面に取り入れる」と語った。

「私は国がない時に生まれた世代です。言葉や苗字も奪われたんです。とても辛い時代でした。映画の世界に入るとすぐに軍事独裁が始まりました。ピカソがスペインの内乱を経験して新たな時代を切り開いたように、私は時代の暗黒とその中で暮す人々の生きざまを映像を通じて表現しようと思いました」


 今年5月にカンヌ映画祭で監督賞を受賞した作品『酔画仙』でもそうだった。

「最も印象的な場面として挙げられる干潟のシーンでは、画面を覆った灰色は混乱した朝鮮王朝末期の暗鬱、海草の赤は張承業(チャン・スンオプ)の芸術に対する情熱を象徴しているのです。この場面が美しいのは、単純な風光の趣ではなく、この二つの色の微妙な対比を通じて悲痛さを伝えているからです」

 もちろん鄭監督の映像美学は、20年以上にわたってコンビを組んでいる林権澤監督との深い共感を前提にしてこそ可能なものだ。1957年に『地上の悲劇』で撮影監督デビューして以来、映画を撮り続けてきた40年の歳月のうち、20年あまりを林権澤(67)監督、李泰元(イ・テウォン/65)テフン映画社代表と共に歩んできた。

「今となっては林監督と互いに目さえ合わせれば、何を言いたいかがすべて分かります。前世に私たち二人の間で何があったのかを知りたい時もあるくらいです。もしかしたら夫婦だったのかも知れませんね。映画監督が夫なら、撮影監督は妻です。天から授かったご縁ですね。6歳年下の“一生の仲間”である監督と同時期に死のうと、タバコも今年初めに止めました(笑)」

 作業の特性上、野外撮影がほとんどで「46年間に家で眠ったのは20年ほどにしかならない」という鄭一成撮影監督は、「体が疲れてだるいとか痛いと思っても、カメラが回る音さえ聞けばぐっと力が湧いてくる」という“熱血青年”だ。

「歳を取っても若さを維持する秘訣は何かと多くの人から聞かれます。私は仕事を愛しているからだと答えます。それと…常にロマンチックな感情を維持することも若さを維持する秘訣だそうです」

「非常に若い女性を見ても、私は一度も『娘と変わらないな』と思ったことがありません。常に美しい女性に見えます。異性は美しいものだから…。カメラビューのファインダーを通じて見る女優たちに、まず私が惚れなければならないのです。それでこそ映画を観る人々が惚れることのできる映像が撮れます」

 自分の撮った映画が人々の文化的欲求を満たす“小さなオアシス”になることを願う鄭監督は、後輩の映画人たちに対する厳しい一言を残した。

「最近の映画機材の性能は非常に優秀です。しかし、優秀な機材はドリンク剤のようで、あまりに多く飲めば毒薬になります。最近の映画を見ていると、毒薬を飲んだ映画が多いようです。映画は結局は人が撮るものです。

対象の心を自分の心に照らし合わせて撮るわけです」

シン・ヨングァン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース