今年最高人気のCMモデルに選ばれた金ジョンウン

 金ジョンウンは韓国大衆文化のまさに権力者だ。拳で机を叩くのではなく、机の上に座ることができるのが権力だという意味で。サッカーのワールドカップ韓日大会から大統領選挙まで、さまざまなビックイベント続きの2002年であるだけに尚更だ。

 「皆さ~ん、お金持ちになってくださ~い」というキャッチフレーズで2002年の幕を開け、李仙姫(イ・ソンヒ)のヒット曲「私はいつもあなたを」で年末のエンターテインメント市場を直撃した女優の金ジョンウン。

 金ジョンウンは韓国放送広告公社(KOBACO)が10日、6000人を対象に行ったアンケート調査で「最も好きなCMモデル」の1位に選ばれた。それも、そうそうたる面々の大スターを押し退けての首位獲得だ。

 金ジョンウンは声を張り上げたり誘惑する代わりに、机に腰かけながらソフトに語りかける。色気に満ちた笑顔の代わりに「酸素一杯どうですか?」(金ジョンウンが出演したエアコンCMのワンフレーズ)と言いながら隣のお姉さん的な笑い方をする。

 完璧で致命的なサイレンの歌声の代わりに、はにかみながら震えた声で『私はいつもあなたを』を歌う。社会的な激変に疲れた大衆が、金ジョンウンから得たものは日常の大切さだった。


 2002年は金ジョンウンにとって“この上ない”一年となった。クレジットカード会社のCMキャッチコピー「お金持ちになってくださ~い」が、今年最高の流行語になったことをはじめ、はちゃめちゃなコメディ映画『面白い映画』で観客を集めたと思ったら、続けて主演した2作目の映画『家門の栄光』は観客動員数が500万人を突破し、今年最高の大ヒット作となった。

 この映画で金ジョンウンが直接ピアノを弾きながら歌った『私はいつもあなたを』は、携帯電話の着信メロディーでダウンロード数の1位を記録した。

「お金持ちになってくださ~い」と言った自分がお金持ちになった。1年の締め括りに映画『蝶』の出演料として3億ウォン、リゾート会社のCMモデルとして3カ月契約で2億ウォンを得た。

 「お金持ちになってくださ~い」は、自分に対する予言であったようだ。

 「きれいだけど、見る人を絶望に陥らせることのない」彼女の外見は、気さくな性格と重なり、金ジョンウンを信頼を命とする“CMの女王”にした。

 金ジョンウンが囁けば「金持ちになってください」という極めて物質主義的な欲望も、耳を傾けたくなる良い話になり、彼女が呟けば「口を裂いてやる」(映画『家門の栄光』)という恐ろしい暴言も、可愛らしい冗談になってしまう。

 『家門の栄光』の映画的成就度に対する判断は評者と観客ごとにそれぞれ異なるが、舌を巻くほどの瞬発力と適応力に対する高い評価は一致する。

 スターは一般の人とは区分される神秘感があるべきだというのが通念だ。しかし、今年、金ジョンウンの存在は、その通念に対する痛烈な反証だ。その傍ら、隣の家の娘のような金ジョンウンもやはり、特別な存在だという結論になってしまう。

 特別な人が名声を得るのではなく、名声を博する人が特別だからだ。

李ドンジン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース