保育園で童話口演をする「童話おばさん」李ソンウンさん

 ソウルに霰が降った8日。上岩(サンアム)洞の救世軍厚生福祉学院の礼拝堂は、ぽっちゃりした体のおばさんが話してくれる面白い物語を聞くために集まってきた子供たちでごった返していた。

 5年生のタソムちゃんのような“マニア”もいる。タソムちゃんは背が高く葦のように揺れるように歩くか細い子だが、パンよりも物語が好きだという。

 9歳と19歳の子供を持つ母であり、童話研究家の李ソンウン(43)さんが、厚生院の子供たちと出会ったのは昨年秋。「17年間、童話研究家として、演劇遊びの教師として活動してきましたが、何か、借りを作っているような気がして」、秋夕(チュソク/旧盆)を控え、長男のソンジュンと一緒にここを訪れた。

 「保育園の子供たちこそ、物語を切実に必要としているだろうと考えたんです。大人によって傷つけられた心を童話や歌、踊りでもって解消し、埋め合わせてあげたかった」。

 単純に童話を聞かせてあげるのではない。折り紙、歌やダンスなど、多様なプログラムを準備する。普通の子供たちなら3時間で充分足りたはずの分量だが、予測不可能な状況に備えて、十分に用意する。


 赤ちゃんの声から80歳を超えたお爺さんの声まで真似て見せるおばさんが珍しくヘあったが、「間もなくして、また止めるだろう」と疑いの目で李さんを見ていた子供たちは、意地悪なことを繰り返した。

 配った色紙を目の前で破ってしまう子もいれば、マイクを抜いてしまう子もいた。物語を聞き入る幼い子供たちをいじめる小学校高学年の子供たちにはお手上げだった。

 だか轤ニいって、同情してうろたえたり、慰めてばかりいてはだめだということを、彼女は知っていた。その代わり、任務を与えた。マイクの担当、プリント配りの担当、幼い子供を助ける担当…。

保育園に新しい子が入ってくると、また雰囲気は騒然となったが、時間が経つにつれ、子供たちははるかに明るくなり、大人しくなった。

 「物語の力ですね。読書治療というものがあるように、物語には氷のように冷たい心も溶かすことのできるマジックのような力があるんです。母が聞かせてくれるのには比べられませんが、子供たちが目を丸くしたり、涙を溜めるのを見ると、本当に有り難いですね」。

 さらに多くの童話研究者たちがこの事に参加して欲しいという気持ちから、3カ月前からは、徳成(トクソン)女子大学・教育院で自身が教えている童話口演予備教師らと一緒に保育園を訪れている。

 家族もまた李さんの積極的なスポンサーだ。会社員の夫は昨年、「父さんたちの童話研究の集い」に加入しており、大学入試修学能力試験(日本のセンター試験にあたる)を控えながらも母の補助教師として参加していた長男のソンジュンは「母に劣らない息子になるため」、児童学科に進学する計画だ。

 15日後に控えたクリスマスには、子供たちと一緒に発表会も行う。『サンタのおじさんの12カ月』という童話で行う口演の舞台。「自分の中に隠れているもう一つの声を体験させることで、自分の可能性を感じさせる良い機会となってくれれば」というのが李さんの願いだ。

金ユンドク記者
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