老夫婦の美しい生への賛歌『死んでもいい』

 映画『死んでもいい』(6日公開)について、噂されていることはすべてが事実だ。夫の朴チギュさんと妻の李スンエさんの実話を映画化したこの作品で、自ら出演した二人のお年寄りは、二人の愛をありのままに表現した。

 実際の“ベッドシーン”も登場する。しかし、こうしたセンセーショナルな噂の裏から聞こえてくるもう一つの噂も事実だ。この映画は確かに“今年の発見”であり、“最も美しい人生の賛歌”を歌った作品だ。

 映画が始まると小さな半円形のガラスの穴を通してタバコを売って何とか生活を営む朴チギュさんが登場する。次のシーンには下着姿で入れ歯を磨く寂しい老人の姿がある。

 しかし、公園のベンチで李スンエさんに初めて出会う場面のすぐ後に『死んでもいい』というタイトルが浮かんでからは一瀉千里だ。

 一緒に暮すようになり、階段を上りながらも立ち止まり“キス”をして、互いに腕枕をしながら楽しむ二人の姿は、世の中の多くの恋人たちのときめく心の動きとぴったり一致している。

 “作為的ではないロマンチックコメディー”でありながら、“腹黒くないセックスコメディー”でもあるこの映画は、噂通りベッドシーンが量と質で相当なパーセンテージを占めている。

 BGM一つなく“現場の音”と“台詞”だけでリアルさを表現したベッドシーンの数々は、映画初盤の多少の衝撃といじらしさを軽く飛び越え、場面ごとに“生きていることの歓喜”を証明している。

 染みだらけ顔に弛みきった肉体についには訪れた人生の喜悦は、驚異的であると同時に畏敬の念を抱かせる。

 『死んでもいい』は確かに完璧な映画ではないだろう。しかし、朴ジンピョ監督は、二人のお年寄りの人生と愛を最も自然に表現する方法が何かに気付いた芸術家の本能を持っている。

 ドキュメンタリーと映画の微妙な境界でも進むべき方向を見失わなかった監督は、非難を浴びる可能性の高い素材を選んだが、結局は主張したいことを最後までやり尽した。成功した芸術は常に全体が部分的なものよりも大きい。

李ドンジン記者
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