いくら「不倫」が映画の古典的素材であるとしても、2日クランクインするイム・サンス(40)監督の3番目の映画『浮気家族』(ミョンフィルム制作)のような不倫映画は、忠武路(チュンムロ)であまり見たことがない。
一言で言えば、家族全員が浮気をする。夫は若い女性と浮気をし、主婦は熱い眼差しを投げかける隣の家の高校生に一つ、教育(?)をしてあげる。義父は肝臓がんで倒れているというのに、義母は初恋の相手と情事を重ねる。
一目にも荒唐な話しを、“愉快”に描くという。あらゆる疑問を胸に、1日、ソウル恵化(ヘファ)洞の作業室でイム監督と会った。
ファッショナブルな眼鏡に片方だけのピアスまで、20代のように着飾っているが、彼は慎重かつユーモラスだった。イム監督は「当初、ヒロインにキャスティングされた金ヘスがテレビドラマ『張禧嬪(チャン・ヒビン)』と契約し、途中下車した後、『オアシス』のムン・ソリを電撃的にキャスティングするまでの1カ月間、「休み」を取ったとしながら笑った。
-なぜよりによって「姦通映画」なのか。
「表面的には姦通を扱っているが、実は“家族”の話をしたかった。祖母や祖父までも含めた家族の話を。韓国では“家族”が不可侵の聖域のように神秘化された側面がある。しかし、家族とは生きていける力にもなってくれるが、葛藤や暴力の震源地でもあるのではないか。そのような実態を露にしたかった」
-結局、家族の解体と破局で終わると聞いたが、少し重い感じがする。
「私は愉快に描くつもりだ。このような内容を重黷オく撮ったら、誰も観ようとしないはずだ。暗くて悲劇的なストーリーも、軽快に描く方が好きだ。ましてや、女性キャラクターの立場から見れば、破局ではなく、新たな出発と解釈することもできる。見かけだけしっかりしていて、中には問題が山積していた家族が、完全に解体されるわけだから」
-事実、イム監督の映画は「気楽に観れる」映画ではない。デビュー作の『ディナーの後に』(98年)はセックスと関連した露骨な台詞が続出し、賛否両論が沸騰した。デジタル映画『ティアーズ』(00年)も、家出をした10代の危うい生活を赤裸々に描いて、評論家たちの間で論議を巻き起こした。扇情主義ないしは“ショック療法”ではないかということだった。
『浮気家族』もそうなる可能性が充分ある。義母が息子や嫁の前で、「私、最近生まれて初めてオルガスムスを感じるのよ…」としながら、自分の浮気を堂々と明かすと聞いたが。
「誰もが話す内容、誰もが知っている話には興味もなければ、作品としても価値がないと思う。作品を世の中に投げかけた時、人々がたくさんの話をするというのは、監督の立場からは、幸せなケースだと思う。小さな感動だけを与える“良い子映画”には、私はまったく興味がない」
-カメラを手持ちで撮影する作法は、前作同様、今回も続ける予定か。
「そうだ。私は私の映画が正当な方法で撮影され、単純な“見物”に止まるのを望まない。まるで、ホームビデオで撮ったかのように、ドキュメンタリーを観るようなリアル感溢れる映像を作りたい」
-特に、女性の真の性の発見に関心が多いようだが。
「別に、そう言うわけではないが…。『どうせやるのなら、上手くやりたい』ということだ(笑)。画面上ではセックスで表現されるが、女性としてのアイデンティティーと関連があるはずだ。私は男にはまったく関心がない。性的二重性の面で、私は男たちから“希望の徴候”を見出せずにいる。しかし、女性たちはそうでない。
たくさんの面で、彼女たちがさらに希望的だ」