チャ・スンウォン「本物のコミカル演技は実際の経験から出る」

 「これといった理由もなく」この男性はスプーン1つで6年間穴を掘りながら「やみくも脱獄」に挑戦する。それ以降は食卓のスプーン1つ見ても、ご飯でいっぱいの口を開いておいおい泣きながら、見ている者を笑わせる。

 映画「光復節特赦」(金サンジン監督)でチャ・スンウォンが演技したムソク。1つ以上のことは同時進行できない「単純男」だ。

 僅か数年前まででも、チャ・スンウォンにこのような役柄がこなせると思った人は誰もいなかった。身長188センチに筋肉質の体、濃い眉毛とはっきりした顔立ち。トップモデルとして名を馳せ、テレビドラマで人気を集めた頃は、チャ・スンウォンはただ、スラリとした「ハンサムな男」であった。

 そんな彼が今やコメディー映画で「水を得た魚」のような活躍ぶりだ。去年出演した「新羅の月夜」は全国の観客動員数で450万名の記録を立て、最近封切りとなった「光復節特赦」は公開9日目にして全国で観客100万名を動員し、興行成績1位をの座を守っている。

 スパイ映画に出て来そうな美男子が、ぎらぎらした目を更に大きく開き、誇張した動作を見せる時、観客らは倍以上の歓声を惜しまなかった。

 あのコミカルな演技は一体どこから来るのか。29日、江原(カンウォン)道・寧越(ヨンウォル)のロケ現場を訪ねた時、彼は「全てが私の本当の姿」と答えた。「よく演技の20%が実際の経験で、80%が演技といいますが、私はそうは思いません。本当に経験した感情が80%は湧いて来ないとね。」



 実際に普段から車勝元は瞬発力のあるジョークで絶えず周囲を笑わケる方だ。『光復節特赦』で泥の中を這いずる場面のロケでも「他の俳優たちはマッドパックをするってのに、うちらはこれかい」といったジョークで撮影現場の雰囲気を和ませた。

 貧しい小市民の演技も車勝元には自然なことだ。「“一生貧乏”そうな男だってよく言われますが、実際にも大金稼いだことがないんですよ。デビュー当時に出演したドラマで、青年実業家の役をよくやらされましたが、本当に似合ってませんでした」

 車勝元は「真夏でも日の当らない半地下の家で育った」と告白した。そのため、彼が記憶する窓の外の風景にはいつも目の高さに芝草が生えていた。だからだろうか、車勝元がサジでトンネルを掘り、パンを食べながらわあわあと泣き出すシーンは、笑いの中にも哀愁が漂っている。

 車勝元は『光復節特赦』出演契約時にランニングギャランティー(興行に成功した場合、観客動員数に比例して追加で支給される出演料)のサインをしなかった。「真剣に頭数で金を賭け合うのが嫌で」とその理由を話す。しかもギャランティーについても金額を問わなかったという車勝元は「ギャランティーの金額で話題になる俳優にはなりたくない」と語った。

 車勝元が常に携帯している手垢だらけの手帳には、短く書かれたその日のスケジュールと家族写真が入っているだけだ。涙もろくてデリケートな男の姿がそこにはあった。結婚15年目にも関わらず、最近でも妻に手紙を書くという。

「妻が今、妊娠7カ月なのに、地方ロケのためにあまり気を配ってやれなかったんですよ。それで直接手紙を書いて、怒った妻をなんとかなだめました」

 車勝元は「ぷっくり膨れた足でふらふらと歩く時の妻の後ろ姿が、世の中で一番美しくて愛しい」と話し、「絵のように美しいメロドラマには、ぎこちなくて出られない」という。車勝元の出演作の殆どは、男性俳優同士が主演した映画だ。現在、寧越(ヨンウォル)で撮影中の映画『先生キム・ボンドゥ』(チャン・ギュソン監督)も女優とは言い難い小学生しか出演していない。

「男同士で演じるのが最初は楽だったんですよ。ところが、そんな映画にばかり出ていたので、女優との共演がまったくなくなっちゃいました。この調子だとラブストーリーは当分難しそうですね」。優しい彼の眼差しから、ふとチェ・ムソクの無邪気な笑顔が浮かんだ。

寧越=李自妍(イ・ジャヨン)記者
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