『夜に旅立つ女性』を歌ったフォークシンガーのハ・ナムソクが、12年振りにニューアルバム『愛伴』を引っさげてカムバックした。
1973年にデビューし、80年代中頃まで感情に溢れたメロディで人気を博したハ・ナムソクの通算10枚目のアルバムだ。そして、22、23の両日、南大門(ナムデムン)のメサポップコーンホールでデビュー30年目にして初の単独コンサートを行う。
「以前はフォーク歌手の単独公演は珍しかったんです。大抵は何人かが集まって行っていました。彌沙里(ミサリ)のライブハウスで地道に歌ってきましたが、正式に行うコンサートでファンに会えるのは、だいぶ気分が違いますね」
ハ・ナムソクはフォークソング全盛時代に最も脚光を浴びたスターの一人だ。74年の『風にまかせて』で人気を博した後、ラジオの音楽番組のパーソナリティーとしても名声を広めた。76年に『夜に旅立つ女性』を大ヒットさせ絶頂期を迎え、84年には『泣く子は馬鹿だ』でその健在ぶりをアピールした。
「テレビなどに出演していなかったので、まだ歌手をやっていたのかという人たちもいます。歌手は歌っている姿が一番美しいと信じているので、バラエティー番組への出演は断っています。毎回、昔のヒット曲だけを歌ってほしいと言ってくる番組へ出るのも嫌で、敢えて避けてたんです。私が歌いたい曲を歌うことのできる舞台さえあれば十分でした」
ハ・ナムソクは1949年生まれの53歳。入れ替わりの激しい韓国の音楽界で、この年齢になってからニューアルババムを出す“勇気”のあるミュージシャンは稀だ。「売れないアルバムを出してどうするのか」といった声を聞くほど、中堅歌手たちのアルバムリリースに徹底してそっぽを向いてきた音楽市場の風土のためだ。
ニューアルバムには『私は行かなければ』、『天気は曇り』、『心は鳥になって』などの叙情的な本人作曲の13曲を収録した。音楽のスケールを広げようとスタンダードジャズなどの新しいジャンルも導入した。
「音楽に対する情熱は変わりません。
以前は小節ごとに表示して、テクニックで音を作っていたとすれば、今は私自らが曲を吟味して、歌うことができるようになったという違いがあるだけです」