薜景求(ソル・ギョング)と車勝元(チャ・スンウォン)。まったく合わないような二人が刑務所で会った。
一人は檻の中でも“兄貴”と呼ばれ、もてなしを受ける単純無知な窃盗犯。一人はやたらと刑務官の受けがいいペテン師だ。窃盗犯は脱獄しても行き場がないが、ペテン師は同せい中の恋人がいる。
こう聞くと前者が薜景求で、後者が車勝元のようだが、これがまったく反対なのだ。これにはすっかりやられた。直接映画を観てみると、まったく似合わなそうな配役がおかしなことにしっくりとくる。
22日公開の『光復節特赦』は、『ガソリンスタンド襲撃事件(日本公開タイトル『アタック・ザ・ガスステーション!』)』、『新羅の月夜』で韓国コメディー映画の代表コンビとして浮上した金想辰(キム・サンジン)監督とシナリオライターの朴ジョンウ氏が3度目のコンビを組んだ作品だ。
二人の作品が常にそうであったように、さまざまな人間模様が絡み合い、必ず騒々しい仲間割れを起こす。“ガソリンスタンド”、“新羅”(慶州(キョンジュ))に続いて、今度は刑務所だ。今回もやはり大人しくはしていない。疎外されたアウトロー人生(服役者)とまっとうな人生(刑務官、国会議員)の位置を覆してしまう悪趣味も相変らずだ。
ペテン師のジェピル(薜景求)と窃盗犯のムソク(車勝元)は、何かにつけ衝突する刑務所のルームメートだ。昔の恋人のギョンスン(ソン・ユナ)が結婚するという知らせに理性を失ったジェピルと、脱獄を夢見て6年間スプーンでトンネル@り続けたムソクは、千辛万苦の末、劇的に二人で脱獄に成功する。
しかし、解放感も束の間、新聞で自分たちが光復節の特赦(特別赦免)名簿に載っている事実を知り、次の日から刑務所に戻るための悪戦苦闘が始まる。
売れっ子の監督、シナリオライター、俳優が手を取り合った『光復節特赦』は、とりあえずコメディーを成す三角構図がしっかりとした映画だ。もう少し待てば楽に出所することができた二人が、たった一日ばかり早く脱獄したために四苦八苦するという設定からして奇抜だ。さらに刑務所という重い背景とロードムービー的な性格までが加わり、話を進めていく要素も多彩だ。
前作を大ヒットさせた監督だからだろうか。犯人たちが群衆をひざまつかせ、政治家たちが卑劣な本性を現わすなどのいくつかの場面では、前作と非常に似通ったという感じもなくはない。だが“ろくでなし”のキャラクターを中心に演じてきた車勝元は、今回も絶頂に達したコミカル演技で映画全体をリードする。
“牧師の説教風”に脱獄経験を告白するシーンの言いぐさや、両手を広げて賛美歌を歌う時の彼の図々しい表情からは、明るくハンサムな“モデル・車勝元”の姿はどこにもない。
「前もって用意しとけよ。法律を破る理由がないじゃないか!」と訓戒を垂れる薜景求の飾り気のなさは、出演陣の一貫されたオーバーアクションに適切なバランスを与える。