ひそひそと話しても声を深く響かせる人がいる。演劇俳優のハン・ミョング(42)がまさにそうだ。向かい合って座る人が静かに彼の言葉に耳を傾けたくなるような魅力が彼にはある。
「声は生れつきですが、その他は違います。それで常に自分自身を刺激しながら磨いています」
演劇『光海(クァンヘ)遺憾』(イム・ウンジョン作/ハン・テスク演出、6~13日、文芸振興院芸術劇場大劇場)で主人公の光海君を演じるハン・ミョングはインタビューの最中、稽古部屋で、そして食事の時までも“光海君”の話ばかりする。
常に持ち歩いているノートには「光海を不安にさせた要因…」といった具合に配役についての分析が細かく書かれている。『歴史人物を再び読む-光海君』などの関連本は、稽古を始める前にすべて読んだ。酒の量を調節できないほどの“酒愛好家”だが、3カ月間一滴も飲まずに稽古に集中した。
「観客に対するサービスなので、一時とも気を抜くことが出来ません。観客が演劇一本を観るために払う費用と時間がどれほど大きいでしょうか。観客が得る満足は、私の汗の量と正確に比例するんですよ。だから敢えて酒は一滴も口にしません」
この作品の演出を務めたハン・テスク氏は、ハン・ミョングを「演出を安心させる俳優」と語った。演劇『父子有親』で思悼世子(サドセジャ)、映画『酔画仙』で張承業(チャン・スンオプ)を雇う財力家の李ウンホンを演じたハン・ミョングは、大学路(テハンロ)屈指の演技派俳優だ。
今回の演劇は権力対立の中で不運な王として歴史に残る光海君の人間的な面と隠された業績を描いた。
「光海は16年間王世子(国王の世継ぎ)だったためにストレスがどれほど多かったことでしょう。王世子の座を10回も失ったり就いたりしたんです。世論によって天国と地獄を行き来する王候補は苦しい立場なのです。恐らく今の大統領選挙候補者たちがこの演劇を見れば、共感するものが多いでしょう」。
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