魂を奪われるインターネットサイト『白い部屋』

 韓国映画『パイラン(白蘭)』を観た後流れる涙が、感傷でいっぱいになる『手紙』の涙に比べ後味が重く、不便に感じられるように、ホラー映画の中の恐怖も、1種類だけではない。

 そういった点から、イム・チャンジェ監督のホラー映画『白い部屋』(15日公開)から感じられる恐怖は、映画を観る2時間の間だけ戦慄し、映画館を出て私たちの日常がどれほど安全かをさらに自覚させる“楽しむ”恐怖とは程遠い。それほど、始終暗鬱で重苦しい。

 『白い部屋』は、私たちが空気のように親密に感じているインターネット空間を恐ろしい呪いの空間に変えてしまう。特定サイトに接続した女性たちが相次いで死んで行く。それも、まるで妊婦のようにお腹を膨らまして…。

 テレビ局のドキュメンタリープログラムディレクター(PD)のスジン(李ウンジュ扮する)は取材のために会ったチェ刑事(チョン・ジュンホ扮する)から、この奇怪な連続死亡事件を聞き、関心を持つようになる。

 ある日、この異様なサイトに接続したスジンは震え慄いてしまう。モニターに死んでいる自分の姿が映ったためだ。自分も数日内に死ぬかもしれないという切羽詰った恐怖と戦いながら、スジンはチェ刑事と一緒に、事件の謎へと吸い込まれて行く。

 私たちが恐怖を感じるのは、分らないからだ。スジンもなぜ死ななければならないのか分らず、誰が、なぜそのような呪いをかけるのか分らない。だから、恐ろしい。このミステリーを一緒に辿って行く観客も恐怖に震えてしまう。呪いの根源を推理する糸口があるとすれば、それは未婚のスジンが男性のアンカーと人に隠れてセックスをする仲だということくらいだ。

 『白い部屋』の設定は、特定の電話機の持ち主が相次いで死ぬ『フォン』と似ている。しかし、観客が「楽しむ映画を観る」ことにさほど神経を使っていないということに、その差がある。

 短編映画で実験的想像力を披露したイム・チャンジェ監督は、映画全体をレンブラントの絵画のように暗く、啓示録的な映像で表現している。ヒッチコックの『サイコ』を連想させるような初めの部分の浴槽での殺人シーンのように、浴槽に溢れる血と水、どこからが聞こえてくる気味の悪いサウンドなどで
観客を恐怖の中へと陥れるくだりなどでは、映像とサウンドで観客の感覚を刺激する抜群の技が目立つ。

 しかし、『白い部屋』はチョン・ジュンホや李ウンジュといったスター俳優を起用していながらも、それほど観客は念頭に置いていないようだ。恨みのこもった霊が叫ぶ呪い、霊に関するミステリーまでも持ち込んだこの映画の話法は、極めて不親切で、あちこちでぎくしゃくする。俳優たちの演技にも起伏がない。

 何事もなかったテレビ局のアンカーがいきなり殺人鬼のように急変するといった説得力の落ちるくだりもある。映像とサウンドで最高の料理を並べているが、それは極めて食べ辛いご馳走になってしまっている。

金ミョンファン記者
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