李炳憲(イ・ビョンホン/33) は“青年”という言葉が似合う俳優だ。30歳をとうに過ぎたというのに、きれいな歯並びを見せてにこりと笑う様子は、20歳の若者のようにさわやかだ。
60年代の地方の独身小学校教師(『私の心のオルガン』)、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)軍の歩哨所に遊びに行く好奇心に溢れた兵長(『共同警備区域、JSA』)、傘の下に飛び込んできた女子大生に一目ぼれする大学生(『バンジージャンプをする』)…。映画の中の李炳憲は、世間知らずの純粋な青年役が多かった。
その李炳憲が最近少し変わった。恋愛映画『中毒』(朴ヨンフン監督/25日公開)で1年半ぶりにスクリーンに復帰する李炳憲は、顔のラインが一層シャープになり(今回の映画のために6キロ減量した)、明るく澄んだ瞳の中には様々な表情が見て取れた。“永遠の青年”から“大人の男”になって戻ってきた感じだ。映画『中毒』の切ない愛に中毒してしまったからか。
「今回の映画は本当に大変でした。どれとも言えないけれど、ワンシーン、ワンシーン全てがです」
映画『中毒』で李炳憲は事故で亡くなった兄(李オル)の魂が入り込む弟役を演じた。自分を受け入れようとしない兄嫁(李美妍(イ・ミヨン))を切ない眼差しで見つめる悲恋の主人公だ。
「映画を見る人は『何が大変だったのか?』と思うかもしれません。台詞も少なく、ほとんど無表情でしたから。ですが、何の意図的な表現もなく感情の流れをつないでいくのは、他のどの作品よりも大変でした」
“憑依”を扱った『中毒』は、ちょっと聞いただけでは転生を扱った前作『バンジージャンプをする』と通じる面がある。だが李炳憲は「二つの作品のカラーは全く違う」と強調する。「『中毒』は恋愛映画ですが、ミステリー・スリラーの雰囲気を持っています。モノトーンの冷たいガラスの破片の上を歩いているような感じというか。観客の判断にゆだねられるところが多いと思います」
李炳憲は自分の出演した映画が上映されている映画館に行き、観客の反応を直接見るのを楽しむ。『JSA』や『バンジージャンプをする』は映画館でだけで30回以上見たほど。「観客の息遣いを感じるその時間が、俳優として至福の時です。満員で一番後ろに立って見る時は本当に幸せですね」
李炳憲は今年8月、京畿(キョンギ)道広州(クァンジュ)の一戸建てに引っ越した。米国で暮らす母方の祖父母と一緒に暮らすためだ。
「祖父が米国で体を悪くし、危篤になったことがあるんです。その時から一緒に暮らそうとずっと考えていました。陳腐な話に聞こえるかも知れませんが、父が亡くなった時『生きている時に孝行しろ』という言葉を痛感したんです」
李炳憲は新しい家にホームシアターも設置し、DVDに夢中だという。最近面白かった作品に『アメリ』を挙げた李炳憲は、「映画の中で“辛い”恋をたくさんしたので、次回作ではもっと楽しい恋愛映画に出演したい」と話した。