演出家・金亜羅「私の見たハムレットは小心者」

 7日午後6時30分、ソウル市内の貞(チョン)洞劇場。金亜羅(キム・アラ/46)演出の『ハムレットプロジェクト』(10~30日、貞洞劇場)のリハーサルが始まった。金亜羅は演劇が行われている最中、時々短い言葉で指示を送る。「幽霊の台詞をモノトーンで」、「ブルーの照明を落として」

最後のシーンまで流れを一切止めず、公演が終わった後に一言できれいに締めくくる。「音響を調節しなければね。今日の演技は良かったからこれで終り」。たった1時間半で終わった、無駄のない練習だ。

 女性としては唯一の指折りの中堅演出家。1996年から京畿(キョンギ)道・竹山(チュクサン)に造られた演劇村で、俳優らと合宿練習をしている。金亜羅はシェークスピアの悲劇を自身の演劇として再構築する作業を4年間続けている。『ハムレットプロジェクト』は、すでに音楽中心の演劇として二度公開されたが、今回は台詞中心の新たなバージョンとして再構築された。

 「なぜこだわるかですって?シェークスピアは人間のジレンマをあまりにもよく表現しているからです。好きな作品に自分の解釈を加味して、新しいものにすることは演出家の“趣味”です」

 金亜羅が作り出した『ハムレット』は、美しい台詞を読み、思索にふけるといったスマートな主人公ではない。卑怯で気の小さい人間で、周囲の人々を自分勝手に歪曲して思い込んだ末にその苦しさで狂気に至る人物だ。

 「ハムレットの目には母親が“セックス癖”のある女性に見えます。父親を殺した叔父と結婚したという理由からね。愛する女性のオフィーリアは娼婦の気質がある女性に見える時もあります。そんな疑いが、結局は自分を破滅に導く刀となります。私たち人間がまさにそうじゃないですか。お互いに対して歪曲された考えをしながら、実際にはまともな会話さえできないから」

 人が自分の欠点と周りの人たちに対する疑念の強迫観念に捕らわれたら、どうなるのだろうか。金亜羅の『ハムレットプロジェクト』は、これに対する答えを筆で適当に殴り描きした一幅の“熱い抽象画”のように現している。

 しかし大衆には難解に映るという負担はないのか。金亜羅は「私の公演って意外に観客が多いんです」と言いながら笑った。「大多数の観客のことを考えていたら、まともに創作ができません。

私のスタイルを貫けば、ファンの人々はこれからもずっと劇場に来てくれるでしょう」

李圭鉉(イ・ギュヒョン)記者
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