やはり生まれ持ったものだ。映画の中で彼が瞬き一つしただけで、足でボールを蹴っただけでも観客はざわめき爆笑する。映画俳優の宋康昊(ソン・ガンホ)。普段は大人しく口数の少ない宋康昊は、コメディー映画に出れば“水を得た魚”となり、まるで取り付かれたように役に入り込む。宋康昊が『YMCA野球団』の4番打者、李ホチャン役でコミカル演技に復帰した。『反則王』でプロレスに挑戦したと思ったら、今度は野球だ。いや、“ベースボール”だ。
「朝鮮時代の話というのが魅力的でした。当時の人々には野球がスポーツというよりは未知のものだったんですよ。野球自体よりは時代的な雰囲気を伝えようと努力しました」
宋康昊が演じる李ホチャンはある意味、非常に個性のないキャラクターだ。野球に対する情熱も、女性に対する関心もなく、時代の悲痛さに悲憤慷慨(ひふんこうがい)すらしない。それでも宋康昊特有の言いぐさと表情の演技は、見る者を自然に“李ホチャンひいき”にさせる。
しかし、いざ宋康昊は「こういうリラックスした映画で演技するのが一番難しい」と打ち明けた。思った通りに演じられない時のことをいっているのかと聞くと「思った通りに演じられた時も同じ」という。「撮影のサインが下りた後『カット!』の声がするまでの数秒間は、本当に私自身一人じゃないですか。
周りはただ見ているだけで誰も助けてくれませんからね」