「私でなければ書けない作品を…」脚本家・宋智娜さん

 『モレシゲ(砂時計の意)』神話の主役である脚本家の宋智娜(ソン・ジナ/43)さんが帰ってきた。息子の教育のために昨年12月、ニュージーランドに渡ってから、ちょうど8カ月ぶりだ。宋さんの表現を借りると、「耐えるところまで耐えて」から来た。SBS武術時代劇『大望』(10月12日放送予定)を執筆するためだ。

 3週前に入国した宋さんを17日夜10時、一山(イルサン)の自宅前のカフェ「オレンジカウンティー」で会った。生活韓服に運動靴姿で軽やかに歩いてくる彼女は、相変わらず暖かい笑みを浮かべていた。

-高校1年の息子 チン・ハンセ(16)君のためにニュージーランドに渡ったと聞きましたが。

「必ずしもそういうわけではありませんでした。まるで、私がものすごい教育ママのように新聞に書かれてしまって、恥ずかしかった。感受性を開発する時期に韓国で高校生活を送るのは、あまりにも惨いと思ったのです。世間に気をとらわれず、自分のやりたいことをやらせてあげたかった。最近、息子は午後3時に学校が終わると、小説を書いています。第2次世界大戦を背景にした小説だそうです。毎晩、私とオンラインゲームも楽しみますよ」

-ニュージーランドでの生活はいかがでしたか。

「8カ月がまるで8年のように思われます。朝、ハンセを学校に送り、渓谷のある家の庭で妄想に耽ったりしました。10分あまりの距離にある海辺を散歩したり。考える余裕ができたことが嬉しかったですね。キャラクター研究のために書いトいたものを集めて、小説も書いています」

 宋作家は『大望』が終了すれば、再びニュージーランドに戻る予定だ。夫のチン・ギウン(49/元KBSプログラムディレクター(PD))さんは韓国で衛生放送事業を行っているが、少なくとも息子が高校を卒業するまでは、ニュージーランドに駐在する予定だ。

-韓国社会に関するテーマをシリアスに綴っていた宋作家が武術時代劇『大望』を書くということに、少しは違和感を感じます。宋作家にあまり似合わないという話も聞こえますが。

「そうですか? 幼いごろから武術漫画のマニアだったんですよ。『モレシゲ』、『カイスト』を書く時は、人々に何かを残さなければならないという強迫観念があったんですが、今回の作品は違います。重苦しいテーマ意識から逃れ、純粋に人々の物語に迫りたいです」

 『大望』は『モレシゲ』のスタッフが7年ぶりに集まって制作する作品。金鍾学(キム・ジョンハク)PD、宋作家はもちろん、音楽を担当するチェ・ギョンシクさん、編集監督のチョウ・インヒョンさんまで、「ドリームチーム」が結成された。


-金鍾学PDと再び一緒に仕事をする感想は?

「実家に戻ったような気分ですね。私が書いた意図とほんの少しの誤差もなく、画面を作り上げてくれますから、安心できます。金PDのメリットは、作家の想像力を制限しないこと。しかし、金PDは完璧主義者だから、仕事はきついですよ。ワンシーン、ワンシーン、疎かにできませんからね」

-宋作家のために『大望』の制作スケジュールが遅れたという話があります。

「そうなんです。私がもう少しニュージーランドでの生活を楽しもうと、怠けてしまったんですよ。ニュージーランドから電子メールで脚本を送ることにしていたのですが、なかなか届かないものだから、金PDらスタッフが直接、訪ねてきてしまって。その翌週に韓国に帰ってきました」

-韓国で脚本家として生きることはどういう意味でしょうか。

「そうですね。芸術家は自己満足のために作業をしますが、脚本家は他人が楽しむ姿を見て、初めて満足できる職業です。だから、一番辛いことは自分の基準を失うことです。視聴者たちが私を高揚させて欲しいですね」

-『モレシゲ』は時代を先駆けたドラマだという評価を多く受けました。

「あの時代に、誰が書いても書けたはずのドラマです。私が書いたというより、時代が書いたと思うんです。私が話したかったことを全部書けなかったことが、今も心残りですね」。

チェ・スンヒョン記者
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