秋夕(チュソク/旧盆)を控え、韓菓(韓国伝統菓子)作りに慌しい。しかし、韓菓は1年のうちで旧正月と秋夕にだけ集中して売れる。
韓菓職人の韓泳鏞(ハン・ヨンヨン/33)さんは「パンやチョコレートのように、毎日お茶を飲む時に韓菓も一緒に」と“韓菓の日常化”を提案する主人公だ。
韓さんのトック(餅)カフェ「ハンサン」(ソウル鍾路(チョンロ)区・八判(パルパン)洞/02-720-9500)の入口には韓菓を2~4個ずつ小さく包装したものがずらりと陳列されている。ナツメを長時間蒸して作った“テチュ棗卵(チョラン/ナツメを蒸して種を除いて蜂蜜を混ぜたもの)”、紅参を煮こんで栗模様に丸く作った“人参ユルラン”、色合いが美しい“四色ケガンジョン(胡麻菓子)”などが仲良く透明の包装紙に包まれている。
「少しずつ、何度も味わうと本来の味が分かります。1年にたった二回、それも大きな包装のされた贈答用のものだけを食べていては、何年かかっても韓菓の美味しさを理解できません。それで敢えて包装を小さくしたんです。韓菓の味に慣れるまでは、少しずついろいろと召し上がって下さい」。韓さんは三清(サムチョン)洞の韓定食屋「クンギワジプ」とトックカフェ「ハンサン」のオーナーだ。ロッテホテルと新羅(シルラ)ホテルの韓国式レストランのシェフ出身の韓さんは、子供の頃から料理と自然に親しむようになった。
韓さんは全羅(チョルラ)南道・羅州(ナジュ)の出身。11人兄弟の次男に嫁いだ母親は、軍人一家だった本家に代わって宗家の長男の嫁としての役割を果たした。旧正月や旧盆の料理を作る時に「ごまをちょっとかけて」、「かめを運んで」などの台所の手伝いは、6人兄弟の末っ子だった韓さんの役目だった。
18歳の時、食堂を切り盛りする母が寝込み、代わりに1週間だけ手伝ったことが、韓さんが“料理人生”にどっぷり浸かるきっかけになった。全国を直接回ってその土地の料理などを学んだ。しょうゆ、味噌、コチュジャン(辛味噌)の勉強から始め、贈答用料理や韓菓などで自然に腕を磨いていった。韓さんは『韓国煎油魚100選』、『韓菓100種展示会』といった異色の展示会を開いたこともあり、『美しい婚礼料理』(デザインハウス)を出版した著者でもある。