毎朝、詩を配達する詩人がいる。詩を読む人は資本主義社会の「劣等遺伝子」に転落し、詩自らも落ちぶれてしまった時間の堆積物として扱われているこの速度の時代に、よりによって、詩を配達する「詩の配達人」とは。しかし、彼女にとって詩は、一つの時代を風靡した恐竜の化石ではなく、読む人の魂に傷を作り、人生の羅針盤の役割をする「今、ここのメシア」だ。
「梨花(イファ)女子大学を卒業し、平凡な専業主婦として、一児の母親として、一日一日のみすぼらしい日常」を送っていたムン・ギョンファ(33)さんがインターネット上に小さな家「詩人の手紙(www.poemletter.com)」を作ったのは、2000年12月18日のこと。
「詩は抽象的で、単に文字の組み合わせに過ぎない」と思う人たちに、自分と彼らの魂を揺さぶる良い詩と散文を紹介したいという意図からだった。1996年、季刊『創作と批評』で登壇し、文壇の末席に名を載せてはいたが、自らの詩よりは、主に先輩の詩に感動していた時代だった。
一冊の詩集から1作だけを選び出す誠意、そして広く知られている有名な詩よりは、隠れた絶唱に注目した彼女の視点はネチズンの間で口コミで広がり、人々が集まり始めた。
自発的に彼女の「家」を訪れ、会員加入をして、「明日の朝も一口の詩で始められるようにしてほしい」と、この詩人に強請っている人が、もう4800人を超えた。これまで紹介した詩も400作あまりに上る。そして、これら熱烈な読者たちの好評が、その形もない無線の手紙を集めて、紙の本で出版するに至らせた。タイトルは『詩のように生きたい』。
本には黄東奎(ファン・ドンギュ)、呉圭原(オ・ギュウォン)、郭在九(クァク・ジェグ)、李晟馥(イ・ソンボク)、鄭浩承(チョン・ホスン)、金勝熙(キム・スンヒ)、李ムンジェ、チャン・オククァン、金ギテクなどの詩、50作あまりと、それぞれの詩にムンさん自身の内面風景を告白した散文を添付した。
「晴れた日は爽快に一日を始められる詩を探して、また、雨の日は心に小雨を降らせる詩を探して手紙を送る」というムンさんの「発送原則」に基いて、今回の詩集も1部は『晴れの日』、2部は『曇りの日』、3部は『雨の日』、4部は『暴風の日』、5部は『爽やかに晴れあがった日』というタイトルに合わせて構成された。
ムンさんから手紙をもらう人たちも、ムンさんに電子メールを送る。「朝、牛乳と新聞を配達してくれる人たちに感謝していましたが、詩を配達してくれる方がいらっしゃると聞いたものだから、大急ぎで走ってきました」(イム・ユンテク)、「私は1級の障害者なので、外出することができません。あなたが送って下さるメールを読むたびに、心に安らぎを感じます」(ユ・ジマン)など、心温まる手紙が、冷たいインターネットを暖めている。
ホームページには会員が推薦した名詩や、自ら書いた自作詩も2600作を超えた。先日、12歳の少女が「私も大きくなったら必ず詩人になりたい」として送ってきた手紙は、「私は何のために時間とカネを費やしながらこんなことをしているのだろう」と、一時後悔で弱くなりかけた詩人の心を勇気付けた。
この「詩の郵便発達人」は、「私のメールが朝に飲むミネラルウォーターのように、爽やかな気分にしてあげることができれば」と話した。例え、目先の飢えを解決するパンにはなれないかもしれないけれど、彼女自身、そして彼女を待つ4800人の魂の渇きを癒すことのできる…。