小説家の李潤基(イ・ユンギ)は語った。「人生に疲れて憂鬱になった時、私は崔正鉉(チェ・ジョンヒョン)の漫画を読む」
その“パンチョギ”こと崔正鉉(42)さんが最近、週休二日制の普及で急速に浸透している「DIYブーム」の中心に立っている。日曜大工を少しでもかじっている人で「パンチョギの木工教室」を知らない人がいるだろうか?2年前に京畿(キョンギ)道・安養(アンヤン)に初めてオープンした「パンチョギの木工教室」は、2カ所の直営店を含む全国10カ所にまで増えた。
毎月卒業するアマチュア大工が約100人。彼が出版したDIYの本『トントン15坪パンチョギの家』は、インテリア図書のベストセラーだ。最近では有名家具メーカーや建設会社の幹部たちまで「30坪の空間がマジックのように変化する」という崔さんの15坪の広さの果川(クァチョン)住公アパートに“見学”にやって来る。6日からはじまった果川マダン劇(野外劇)祭の片隅に用意された「パンチョギブース」も連日大盛況だ。「好評で笑いが止まりません」という崔正鉉さんは、漫画の中のパンチョギのように、チェック模様のシャツにジーパン姿で、「河回(ハフェ)タル(仮面)」のような笑顔を見せた。
「妻に代わって子供を育てながら得た、生活の知恵みたいなものですよ。不ヨなハが一つや二つじゃなかったですから。実際のところ私は初心者レベルに過ぎません。英国の人々は自動車も直接組立てて乗るというじゃないですか。お隣の日本でもありとあらゆる工具がすべて揃っています。70年代以前にはうちの父親や祖父にとっては日常のことだったんですが、いつのまにかそんな伝統が消えてしまったのが残念です」
海外に出掛けた時には真っ先にDIYショップや生活雑貨の店に立ち寄るという崔さんの本業は漫画家だ。90年から女性新聞で連載を開始した『パンチョギの育児日記』で一躍売れっ子の漫画家になった。娘のハ・イェリン(12)さんが生まれ、映画評論家の妻に代わって育児を引き受けるようになったことがソウル大学美術学部出身の彼の運命を主夫と同時に漫画家、大工に変身させたわけだ。
かれこれ12年こうした生活をしてきた崔さんは、大変身させた家を披露する時が最も生き生きとした。居間の片隅の四角い木の箱の正体は折りたたみ式の机だが、食卓にもなり、化粧台にもなる。左の引き手を引っぱれば長めのテーブルになり、右の引き手を引っぱれば化粧台になる、名付けて「何でもテーブル」だ。女性が最も驚く場所はキッチンだ。2坪ほどの空間に冷蔵庫、洗濯機、乾燥器、食器洗浄器、米びつ、炊飯器のすべてが収まる彼が発明した収納庫は神業に近い。作業部屋を見てからは、彼が発明王のトーマス・エジソンのように思える。
「私のやりたいことをやって生きていきたいですね。勉強は中学までやれば充分だと思います」
一流大学を出て、なぜ漫画や大工なのかと聞く人たちに、パンチョギは笑いながら答える。
「最近は西洋画科を出てキャンパスに油絵を描く人はほとんどいないはずですよ。設置やパフォーマンス、ビデオなどをやるんです。私の描いた漫画や、あれこれ作ったものも、それで作品なんです。必ず、美術館に展示しなければならないわけではないですから。報道資料を配る煩わしさもなければ、オープニングイベントもやらなくて済む。15坪のわが家が、楽しくて幸せな展示場です」。